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第1話 / 全1話
これは、ここではないどこかの世界のお話。
まだ、世界が朝焼けも、夕焼けも知らない時、2人の魔女が降り立ちました。
最初の1人は白光の魔女でした。後に人々からシロと呼ばれます。そして、少し後に現れたのが黒闇の魔女でした。彼女も後に人々からクロと名前を付けられます。
シロは世界に降り立った時、水の精霊の力を借りて植物を生み出しました。
生み出された最初の植物はみるみるうちに世界を覆いつくし、緑の世界を形成していきます。しばらくの時間、この緑の世界が続いた後、クロは有ることに気が付きます。
それは緑の世界が黄色を生み出していること。そして、その黄色が世界に余り始めたことです。
そこで今度は赤い精霊の力を借りて、動物を生み出しました。
こうして緑と黄色の世界に赤が降り立つことになります。
シロはその様子を微笑ましく眺めていました。
それを見ていたクロ。同じようにその様子を眺めていたのですが、しばらくしても何かつまらない、シロが作った世界は面白くないと感じました。
そこであることを実行します。
クロはシロの放っている光の波動を手に取り、自分の持っている闇の波動と混ぜ合わせます。そして、赤い精霊たちの力を借りて、生命の輝きを貫きました。
すると有るモノが誕生します。
人間です。
人間はクロの手からこぼれ落ち、世界に降り立ちました。そのことに気づいていないフリをして、シロは黙って見ていました。
初めの頃、人間はシロとクロの輝きを感じつつ生きていました。彼女たちに名前が付けられたのもこの頃です。
しばらくすると、人間はあることに気が付きます。
それは、光の波動、闇の波動、そして赤い精霊たちの力が、自分たちの体の中に存在するということ。
そして、存在する。ということは、2人の魔女たちと同じように「自分たちも世界を作れるのではないか」と考えました。
その考えは的中します。
人間は人間による世界を構築していきます。人は無意識に2人の魔女に憧れていたのです。
光の波動で世界を発掘して、闇の波動で発掘した物を固定していきます。
気が付くと、緑の世界、赤の動物たちの力が弱くなっていました。それは、人間が闇の波動の力を多く使っていることが原因でした。
すると、世界にとってクロの影響力が強くなっていきます。
人間の中にある闇の波動とクロが共鳴して、世界は加速していきます。
加速した世界と世界はぶつかるようになりました。
争いごとです。
大きなもの、小さなもの。争いがおこります。それは世界に存在する緑、黄色、赤い精霊たちの力を人間が利用して行われました。
こうして人間は人間の世界を確立していきます。
その様子をクロは微笑ましく眺めていました。
ある時、世界の精霊たちはシロの元へ集まると、こう進言しました。
「シロ様、シロ様。このままではクロ様に全てを覆われてしまいます」
ですがシロは動じません。なぜならその成り行きを全て見ていたからです。シロはドレスをなびかせて、精霊たちにこう言います。
「クロの作った人間たちは争いごとをしています。…何度も。そして、世界がこうなることはわかっていました。ですが、このままでは彼らは、自分たちの生きる領域を自分たちで制限していくことになるでしょう」
何度も、何度も行われる争いごとの中で、人間は徐々に自分達の生き方を決めていきます。
「…彼らがそうなっているのは、あるものを見つけられずにいるからです」
争いを行ってしまう人間が見つけられていないもの。それは青の秘宝でした。
この世界のどこかにある、とシロは言います。
このことを人間は知ることになります。実はシロに進言してきた精霊たちの中に、争いを治めたいと願う人間が居たのです。
「そうか、青の秘宝か」
その人物は、青の秘宝の存在を人間に伝えました。すると人間はまた同じように争い、世界にある青い秘宝を見つけ出そうとしました。
何度も、何度も。争いを行いましたが、見つかりません。
やがて、話を聞いた人物はこの世を去ってしまいました。
その様子を黙ってシロとクロは見つめていました。精霊と一緒に進言してきた人物は、彼女たちの言葉を聞くことが出来る最後の人間でした。
会話が出来なくなった人間は、次第に2人の魔女の名前を忘れていきます。人間は完全に忘れてしまう前に、また新たに名前を付けました。
シロは〝ヒカリ〟そしてクロは〝ヤミ〟と呼ばれるようになり、名前を付けられた2人は〝重さ〟が消え、そのまま天へ昇っていくと、
世界に〝昼〟と〝夜〟が訪れるようになりました。
2人の存在がいれかわる時、空は赤くなり、世界は朝焼けと夕焼けを知ることになります。
人間たちは2人が消えてもなお、青の秘宝を求め続けました。
自分たちの頭の上に、掴み切ることが出来ないほどの、青の存在を忘れて。
おしまい。
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