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第1話 / 全1話
窓辺に男女が並んで座っていた。
カーテンの隙間から差し込む光に、二人の影が重なる。
女は小さな声でつぶやいた。
「最後の日まで、ここで一緒にいられるのかしら」
男は黙ったまま、テレビの画面を見つめている。
世界中のあらゆる分野の学者や博士が集まった。
テレビもラジオも配信も、同じ内容を流している。
博士がマイクを握った。
「世界中の皆さんに、大事な報告があります。落ち着いて聞いてください」
少しの間を取り、ゆっくりと話を続ける。
「今から約半年後、この星は消滅します」
会場は静まり返った。
博士は背後のスクリーンに視線を向け、指で合図を送った。
暗黒の宇宙に、輝く一つの星が浮かび上がる。
「この映像をご覧ください」
博士の言葉と同時に、星は強烈な閃光を放ち、跡形もなく消えた。
「次をご覧ください」
淡い光を放ち続けている星。
スクリーンを一瞬白に染めると、光の粒子ごと宇宙に散った。
さらに三つ目、四つ目。
「これらの映像を、私たち専門家が解析したところ、ある周期と法則が分かりました」
博士は一呼吸置き、スクリーンに最後の映像を映した。
そこには、青い大地と白い雲に包まれた、見慣れた星が浮かんでいる。
「この星もまた、半年後に消滅することが分かりました」
会場が凍りついた。
誰もが声を失い、ただ自分の鼓動だけを聞いていた。
──それから半年。
各国のリーダーは発信をやめ、家族と過ごすようになった。
戦争をしていた兵士は銃を捨て、敵兵に頭を下げた。
「本当は、戦争なんてやりたくはないのです」
二人は肩を並べて、空を見上げた。
街には、不思議なほど穏やかな日常が広がった。
スーパーに押し寄せることもなく、必要な物だけを持ち帰る。
仕事に行く人、犬の散歩を欠かさない人、ジョギングを続ける人。
老夫婦は公園のベンチに座り、走り回る子どもたちを見ていた。
「可哀そうだな…まだあんなに幼いのに…」
星の消滅まで、あと数日。
博士や学者たちは再び会見を開いた。
「皆さん、この半年をどのように過ごされましたか? 実は…」
博士は真剣な表情でマイクを握り直した。
「半年前にお見せした映像は、すべてフェイクです」
どよめく会場。
博士は理由を語った。
「私たちは、この混沌とした世を変えたかった。それには、強いカンフル剤が必要でした」
唖然とする記者たち。
すると、どこからともなく笑い声が広がり、やがて会場は笑いに包まれた。
テレビの前で、あの男女もまた呆気にとられていた。
女は立ち上がり、男に向かって言った。
「旦那のところに帰るわ。あなたを選んだのは、顔だけだったの」
男は言葉を失い、ただ彼女を見送った。
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