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第1章 / 第5話
「来てくれたんだ!」
あてなはやってきたメイに嬉しそうに微笑む。
今日は、いよいよメイちゃんとの最終決戦だ!絶対負けられない。さくら部長や夏先輩、瑠衣さんのためにも。
あてなとメイはデバイスの通信機能を使い対戦モードに切り替える。これで最後なんだ。メイちゃんに勝たなきゃ
ついに決戦の合図がなった。先に動いたのはあてなだった。
あてなのリボルバー『エキドナ』が火を吹く。メイは右方向に転がりながら交わしていく。
あてなは必死にタイミングを探す。あの切り札『弾速ちょーせい』の威力を見せるにはタイミングが命だ。だからといってその間にメイに攻撃されたらゲームオーバーになってしまう。
あてなはわざと今までのようにドッヂボール玉サイズを打ち込む。一発、二発、三発。メイは軽々と交わしていく。メイの反撃タイミングを作らせないようにしなきゃ。
四発!メイの手がハンドガン『アイアンホーク』に伸びるのが見える。もう時間がない!
「いっけぇ」
四発めの弾丸の背後から物凄い速さの弾丸が発射された。
あてな特製のピンポン球サイズの速さ特化型と呼ばれるやつだ。
身体中が熱い!溢れる思いをあえて一端に集中させる。
五発めの弾丸は四発目を追い越してメイに向かっていく。一瞬動きが止まったメイだったが、体を捩らせてすんでのところで弾丸を交わしてしまう。そして不規則な体勢のまま『アイアンホーク』が火を吹いたのだった。
「うっ」
あてなの体が吹き飛んだ。かわそうとして大きくのけ反ったせいだ。だがあてなのライフバーは三分の一があっという間に溶けてしまう。
紫耀メイはまたもや、目を大きく開けてあてなを見つめたのだった。
さすがメイちゃん。これ以上攻撃されたらもうかなり厳しい。
あてなはポケットに仕込んでいた閃光弾の蓋を開けると地面に叩きつけた。
◇
意外だった……。あの一撃で仕留めたと思ったのに。紫耀メイは確実に終わらせるつもりで引き金を引いたと思っていた。 デンサバを諦めきれない気持ちが何処かで狙いを外させた?まさか!
閃光が辺りを包む。埠頭に当たっては砕ける波の音だけがこだましていく。不意打ちを喰らうなんて。こんな時は動かずに耳を澄ませる。相手の足音、弾丸の軌道。目が使えないなら全神経を耳に集めればいいだけ。
発射された弾丸は三発。おそらく囮の二発と本命の一発だろう。しかも本命は弾速を上げたタイプだ。(分かるのよ。アテナ。あなたの考えてることが手に取るように。)
二発の囮はメイの両脇にそれていく。本命の一発が迫る。
「今よ。」
閃光で目を封じられていながら完璧なタイミングでメイは右手に体を翻す。ジャスト!あてなの本命らしい弾丸もメイの背後を突き進む。
閃光弾の効力がだんだんと収まって来た。メイは聞きなれない音がする事に気がついた。
これは?あてなの本命弾?背後から襲ってくる凄まじい速さの弾丸はメイが気づいた時にはすでに、二メートル範囲に達していた。
咄嗟に背面跳びをしながら考えを巡らす。なんでかわしたはずの弾丸が後ろからくるの?確か背後にあったのは……。ありえない体勢のまま背後を振り返ったメイが捉えたのは倉庫に立っているミラーだった。そうか、ミラー!。メイが戦って来た実戦ではホログラム製のステージを使ってたから、ミラーも破壊されると思い込んでいたのだった。
しかし今は、現実の埠頭でホログラムの銃を撃ち合っている。
ミラーにホログラム製の弾丸が反射したのだ。だけど……反射した弾丸を背後から当てようとするなんて。そんな技術もアイデアも今まで見たことない。
背面跳びで奇跡的にかわした紫耀メイはあてなの居場所を探す。いない!いやあそこに!
メイの真下にあてなはいた。その銃『エキドナ』には溢れんばかりのエネルギーが砲身から渦を巻いていた。着地地点を狩る気だ。メイは慌てて着地と同時に地面を蹴る。あてられるはずがない。このスピードなら!
だがあてなはその溢れんばかりの渦を地面に叩きつけた。
「いっけえ!」
凄まじい光と爆発が辺りを包む。全速力で駆け抜けていく紫耀メイ。
爆心地から離れるとライフバーがゼロになったアテナが肩で息をしているのが見える。
「はあはあ。そんな。これでもダメだなんて」
メイはそんなあてなに驚きながら優しく微笑んむ。
「わ……私の負けよ。」
「え?」
「言ったでしょアテナ。私のライフバーを一ミリでも減らすことが出来たらあなたの勝ちって」
メイは自分のライフバーを指差して見せた。そう言うと海を見つめる。悔しいのにちょっとだけワクワクした。なんて言えない……ライフバーは、爆風の外側の衝撃波を受けて僅か一ミリ減っていたのだった。
「めいちゃーん!私!私!」
あてなの顔が見る見るうちに変わって行くのが分かる。あてな……。メイは小学生時代に強敵を倒した時の事を思い出していた。
「やったよぅ!」
その瞬間あてながメイの胸に飛び込んできた。
柔らかい。ぬいぐるみじゃない本物の人間の温かさだ。
「しょうがないわね。」
そう言って少し抱きしめ返す。いなくなってしまうのが怖くて……ほんの少しだけ力が抜けてしまう自分が情けない。
「めいちゃん大好き!」
あてなの柔らかい体に包まれているとなんだか安心してしまう。「馬鹿じゃないの!」なんて……今日だけは言わない!
こうして紫耀メイは明星アテナと共に電華高校電脳サバイバル部に参加することになった。
◇
その日は天城院さくらと相沢夏、そして明星あてなが部室で会議をしていた。紫耀メイは用事があって来れないらしい。
「それではあてなちゃんとメイちゃんの入部を認めます。」
さくらがあてなに向かって微笑むとあてなは嬉しさのあまり拳を天井に突き出す。
「やったぁ」
「でも休部中なのよね。部活動復帰のためには生徒会の承認がいるし。」
悩みの種はまだある。
「おまけに生徒会長はあの蒲生クララなんだよな。」
そう。そこが一番の問題点。電華高校理事長蒲生孔明がデンサバ部を休止しているのも娘のクララの影響なのだ。おまけにクララは大のデンサバ嫌いで有名。今では生徒会は反デンサバ色が強く、このままではいつまで経っても部活動再開が出来ないかもしれない。
「はぁー出たかったなあ夏のアームズ杯」
相沢夏のため息が聞こえてきた。『デンサバ』は、夏に大きな大会が存在する。夏の『アームズ杯』は一般中継もされていて、プロへの登竜門として有名だ。さくらも夏も三年生だから夏の大会は今年で最後ということになる。
「という状況なの。あてなちゃん。」
「分かりました先輩!早速生徒会長に頼みに行かせてください!」
あてなは腕まくりをすると猛スピードで部室を飛び出そうとする。
「待って、あてな。話し合いなら何回もしたのよ。その度にいい争いになって……今では犬猿の仲。無理だわ」
「でも……でも。私みんなで『アームズ杯』出たいんです。部長やメイちゃん、夏先輩と!」
あてなを止めようとするさくら。夏は「いいじゃんか」とニヤニヤ笑って見ている。
「行っちゃった……」
「ああ行っちゃったな」
「じゃないわ。早く追いかけなきゃ」
慌てて走るさくらと夏。慌ただしい上履きの音がこだまし、部室の開いた窓からは春風を感じる。
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