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第9話 / 全23話
どうやってあの書庫への階段を上がってきたのか覚えていない。
俺は膝に手をつき、荒い息を整えた。
さっき見た死体が瞼の裏から離れない。血の匂いが自分の体に染み付いたように感じて、肌がぞわりと泡立った。
とにかく誰かにこのことを伝えなければ。足をもつれさせ、なんとか図書館を出る。
二階へ上がると、廊下の端に岩センが立っているのが遠目に見えた。まばゆい日差しが廊下をぎらぎらと照らしている。
彼は壁にもたれかかり、何かを考えているようだった。なぜか大きな白衣を着て、ポケットに両手を突っ込んでいる。
「岩セン! 書庫で、部長が……! とにかく早く来てくれ!」
俺はそれだけ言うと、返事を待たずに空き教室に飛び込む。何か教室に置かれていたものが足りないような気がしたが、今はそれどころじゃない。
そこにいたのはスイだけだった。机にかじりついて演出画を描いている。勢いよく教室に現れた俺に気づいて彼女は顔を上げた。
「……どした?」
「スイ……! 千夏は!? いや、大変なんだ! 書庫で、部長が……!」
「……落ち着いて。何があったの」
その時だった。俺の背後から声がした。
「あ、センパイ! 早かったっすね?」
「……あ、千夏ちゃんもおかえりー。お腹大丈夫?」
「そんなこと言ってる場合じゃない! 部長が……部長が、大変なんだ! ……死んでるんだよ……!」
その言葉に二人がぎょっと目を剥く。
「……へ?」
「し、死んでるって……どういうことっすか?」
「とにかく、書庫に来てくれ!」
俺は二人の手首を掴んで引っ張った。
「ふぇっ!? な、なにするんすか!」
「うわー、ひっぱられる……」
二人を引きずって、転ばないように気をつけながら階段へ向かう。とにかく俺は書庫へと急いだ。
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