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第17話 / 全23話
まだ昼時には早く、購買には人の気配がなかった。ケースから俺とスイは棒アイスを、千夏はバニラのソフトクリームを選ぶ。俺たちは窓際の壁にもたれて口をつけた。
スイと俺の間には絶妙な距離がある。俺はスイの方に顔を向けられなかった。
隣の千夏の向こうで、窓から静かに日差しがさしている。彼女はわずかに俯いていて、その表情は髪に隠れて見えなかった。
「……ふう。ちょっとだけ落ち着いたっす……」
スイがぽつりと言った。
「……そっか。よかった」
「そうだな。怖いよな、こんなことになって……」
「はい……。でも、こんな時だからこそいつも通りにしてたいんす」
彼女はかすかに笑った。ほんの少しだけ、千夏の手が俺に近づく。
「…………」
彼女は何かを言いかけて口を開き、そしてやめた。
スイは棒アイスをほとんど口に運んでいなかった。溶けたアイスがぽたりと床に落ちる。
俺は空気を変えるように明るい声をあげた。
「……あーあ、本当は俺もソフトがよかったな。でもそれが最後の一個だったからさ。いつも通り、ついてないな」
「そうなんすか?言ってくれれば譲ったのに。……もう」
彼女は視線を揺らした。何かを考えるように、長い睫毛が伏せられる。
「じ、じゃあ……ひとくち、だけ……」
その頬がだんだん色づいていった。
「え? 今何か言ったか?」
「い、いえ!」
千夏は慌てて手を振る。
「な、なんでもないです……あはは……!」
その笑顔に俺は首をかしげる。風が彼女の髪を揺らしていた。
スイはそんな俺たちの様子をじっと見つめていた。
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