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第4話 / 全4話
ビーチの近くにはコンビニや屋台などがあり、水や食べ物などを売っていることが多い。
シンジと、梨央奈はちょうどコンビニに来ていた。スポーツドリンクが切れてしまい追加で誰かが買いに行かないといけなくなり、結局じゃんけんで負けたのがシンジと梨央奈だったわけだ。
砂浜から十分ほど歩いた場所は,高台になっていて,アスファルトで覆われている。
梨央奈が水着の上から体操服を着ているかたちで隣にいると、目線を合わせずらい。
大体これではまるでカップルみたいに見られてるんじゃないか?
シンジが荷物を持ってコンビニから出ると、誰かが梨央奈と話しているのが見えた。鈴子か、こんあたりが来たのだろうか?
「おい梨央奈,どうした。」
「あっこの子もBBB選手なんだって」
その子は,小麦色の健康的な肌に、綺麗な黒髪がサイドテールに結ばれている。
少し、あどけない顔立ちのその子は,シンジの目を真っ直ぐに見つめると、なぜか一瞬引きつったような顔をしながらすぐに、唇を硬く結んだ。
「城……シンジ。」
ってあいつは……。思い出す。あどけないとはいえあの頃よりはずっと大人っぽくなっているから……。
「果林ちゃん?レイジの妹の」
その子は俯きながら舌打ちした。
「お兄……兄貴はあんたのせいで野球を辞めた」
レイジが?確かあいつは、野球の強豪校に行ったはずだ。
「フッ」
果林は梨央奈の方を見るとバカにしたみたいに吐き捨てる。
「……お遊び。全部。こんな子とお遊びしてるから……兄貴は……」
「ちょっとなんなのよっバカにしないで」
梨央奈は、真っ赤になっていいかえす。
「シンジはね。私たちの事見てくれたり、野球が大好きなんだから」
「野球?それが?」
果林は着ていたシャツを勢いよく脱ぎ捨てた。
「何やってんだ」
果林の日焼けした肌が眩しい。
「BBBはお遊び……。だから短時間で片手間でも極められる……」
「ふざけないで」
梨央奈が今にもつかみかかりそうになっていて、シンジは思わず口を開いた。
「分かった。そんなに言うならとりあえず一打席勝負で決着つけろよ」
「えっなんでこんなやつ」
「いい……わよ。ビーチベースボールがくだらないお遊びだってこと、あなたもくだらないってこと、見せつけてあげる。」
果林が脱いだズボンからアクアボールを取り出す。
「投手なんでしょ……。」
「キャッチャーはいないからこのコンクリートを壁にしよう。審判は俺がやる。いいよな。」
「ええ……」
果林はバットを取り出し、壁を背に構えた。バットを寝かせて、オープン気味に構える。
「舐めないでよ!」
梨央奈が、第一球を投げた。ボールは果林の体にぶつかりそうな軌道を描くが果林は微動だにしない。
そのままスライダーが壁に当たった。
「ボール」
シンジは叫ぶ。ほぼアウトコースギリギリだったけど僅かに外れている。果林は定位置から動かない。
「フッ」
梨央奈は投球モーションに入る。今度は速球が真ん中から僅かに変化してアウトコースギリギリに入る。
果林のバットが動いた。ステップをほぼ踏まずに、最短でバットを振り抜く。
流し打ちされたボールは、風に乗って見えなくなった。
「ファール」
またもシンジが叫ぶ。危ない。上手い流し打ちのライナーだがあれが風の影響でホームラン並みの、飛距離かよ。いや、ノーステップとはいえ、梨央奈の球だって135くらい出てるはず。
「危なっ。フン。こっからよ」
果林が再び脱いだズボンからアクアボールを取り出して梨央奈に投げた。
「フン」
梨央奈の直球が、再びうなりをあげる。
速い。140kくらいある。これなら。
「無駄」
インコースに決まりかけたストレートを果林は綺麗に回転しながら振り抜く。
打球は、梨央奈のいるマウンドに向かって、ライナーで飛んでいく。
「きゃっ」
アクアボールが梨央奈の水着を弾いてそのままバウンドした。
「大丈夫か!」
慌てて近づくシンジ。振り向くと果林は、シンジたちを覚めたような目で見つめていた。
「そのカッコ。やはりお遊び……」
そう言うと服を拾いコンクリートの階段を上っていく。
「お遊びなんかじゃ……」
梨央奈の目には涙が出ている。
「とりあえず服着て」
「……うっもういい!」
梨央奈はシンジからシャツをひったくると走り出してしまった。
待てよ。梨央奈。
梨央奈に追いつくシンジ。
「梨央奈……」
「うう……」
なんて言っていいか分からない。梨央奈は換えのフリル付きの水着に着替えてるけど、その目は赤くなっている。
「……」
なんて言う?シンジは思い出す。今まで打たれたことなんて無かった。中学時代は失敗した仲間に「どんまい」と声を掛けるくらいなことはあったけど、こんなに誰かと向き合うなんて分からないし、梨央奈は真っ赤な目で睨んできてるし。
「へんたい」
急に声をかけられて慌てて振り向いた。
真っ白な肌で、雪の様な白い髪の女の子がこっちを指差している。
「いや。なんなんだ。」
「間違えた。たいへん」
その子は抑揚のない声で呟く。
「梨央奈きて。たいへん。監督も」
そう言って強引に片方の手でシンジの腕を掴み、もう片方の手で梨央奈の腕を掴むとそのままコンクリートの階段を下っていく。
「どうしたのよ。さらさ」
「梨央奈知り合いか?」
「部員でしょ」
「新垣さらさ。守備位置は一塁。さらさ影薄いから。胸はA。胸がないと覚えてもらえない」
「いや違うから!」
シンジは弁明するが、梨央奈は,黙ってさらさに引かれていく。
シンジが砂浜に戻ると、すでに人だかりができていた。
「どうなってるのよ」
梨央奈も驚いている。
砂浜のビーチには、黒く日焼けした女の子がマウンドに立っていた。そしてバッターボックスには、茶髪を肩まで伸ばした女の子がバットを振り回している。あれはさっきの試合で、笹倉こん側にいた確か、三宮椿とかいう子だよな。
三宮は、ゆるいボール球を思いっきりフルスイングしようとして三振した。
「あーくそ!正々堂々勝負しろよ」
三宮の、水着はセパレート型で、バットをその場に叩きつけた。
「あいつらがこの海岸をかけて勝負仕掛けてきた」
さらさが言うには、練習していたらいきなり因縁をつけられて勝負することになったらしい。
梨央奈が駆け出すと、その場で体操着を脱ぎ捨て、水着姿になる。
「まかせて」
マウンドに立つ。
試合は、3回まで進んでいて、まだ0対0らしい。
梨央奈が投球モーションに入る。
相手は空振りした。
その後の二球目だった
相手は、バントを仕掛けてきた。「パンッ」という軽い音がしてショート方向へ転がる。
砂浜の足場に加え、不規則に跳ねるボール。
「にゃあー」
あれは確か、ショートの猫谷まあやか。
熱いはずの砂浜を駆けるように走ると、グラブにボールを納め、そこから送球した。
猫谷の送球は、糸を引いたみたいな綺麗な回転で、ファーストに入ったさらさのグラブに突き刺さる。
あの体の使い方なかなかすごいな。シンジはその動きに見惚れた。
結局試合は、最終回の7回までお互いの投手を打てずに同点のまま来てしまった。
梨央奈……。気をつけろよ。最終回の7回表。相手は、バットを思いっきり目の前で、振り回しバッターボックスに入る。
「さあやるかー。時雨海岸BBB非公式同好会代表!朝桐まいな、ただいま出陣」
「いいぞ!まいな」
相手ベンチから喝采が飛ぶ。
梨央奈は、投球を開始した。ストレートが微妙に変化して、外角に逃げる様にボールが収まりかけた。
「うりゃ」
コツン。バットの先っぽに当たった。ボールはピッチャー前に転がる。
「梨央奈」
梨央奈はボールを取ると、投げようとする。梨央奈は走者を見ている。やばい。
そのまま投げたボールは、ファーストの上空へと飛んでいく。
「ごめん」
ノーアウト二塁。
梨央奈は、明らかに動揺してる。タイム取ろう。シンジが叫ぶ前に、梨央奈は、投球モーションに入る。
「コツン」
梨央奈から放たれたボールは、真ん中高めに浮き、相手のバットに当たる。
「センター!」
シンジが叫ぶ。ピンポン球の様に飛んでいくボール。だがあたりは芯じゃない。センターの鈴子は、ビーチの上を走っていく。早い。間に合うかと思ったその時、海から強烈な浜風が吹き荒れて……。
ボールは、風に乗って、あらかじめ決められているラインを割ってしまった。
2ラン。エラーで出した二塁走者も帰り2点を失う。
結局そのあとは相手を打ち崩せず、2対0で負けてしまった。
「ガハハ。じゃあそう言うことで明日からはこのビーチは我々が使う。」
相手の朝桐まいなは踏ん反り返るほどの勢いでそう言った。
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