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第1章 / 第3話
部室棟らしき建物は,旧校舎の裏にあった。梨央奈に手を引かれる形で、シンジはその部室のある階段を上がっている。ドアをノックすることもなく、いきなり梨央奈は,ドアを開ける。
甘い匂いの中に、ぬいぐるみ、着替え。
そして小麦色の肌をした女の子がほぼ半裸で寝そべっていて。
「違う!違うから普段はもっと綺麗だから!あれ私の下着じゃないから」
梨央奈に突き飛ばされる形で、部室棟のドアに放り出される。
ガチャガチャと音がして10分ほど経ち、梨央奈が扉を少し開けて手を招く仕草をする。
部室に入るとさっきの小麦色の女の子と目が合う。
「うわあ。これが新しい監督!すげえ男子じゃん」
思いっきり抱きつかれた。柑橘系の甘い匂いとすぐ近くに星型のピアスがチラつく。
「あたし、御手洗鈴子!ポジは外野!」
慌てて離れるシンジ。梨央奈は,なぜだか冷たい目で睨みつけている。
「ああ,まだ一応監督ということらしい……よろしく」
「うん!よろよろ」
部室の中を見てみる。さっきとは違って片付いてはいた。一つ気になるのは、ロッカーがパンパンに膨れている。あれは見ないふりをしよう。
「とにかくっいいから紹介するわ。この子が御手洗鈴子。私と同じBBBの部員。」
鈴子はこっちを見つめて,ピースサインをした。
「あとはだけど……。他の連中は?」
梨央奈が聞くと鈴子は窓の方を見る。
プレハブの部室棟からはサッカー部のグラウンドが広がっている。
「こんとルカは、買い出し。まあやは気まぐれ、あとは知らん。」
「そっか。せっかく新しい監督に紹介しようと思ったのに。」
その時何人かが階段をどたどた上がってくるのが聞こえた。
「笹倉先輩そんなに怒ると美少女が台無しですよ。おっぱいだって牛みたいになっちゃったりして」
「こら!真面目に練習しなさいとあれほど言ったのに。いい加減にしなさいルカ。」
「はいはーい」
「まったく。それにおっぱいは関係ありません」
「あの子達、女だけだと思ってあんな会話して!って違うの。普段はあんなじゃないから」
「えーいつもあんな感じじゃね。」
「鈴子っ。」
梨央奈が真っ赤になる。
ガタンとドアが開く。
◇
その後部室に何人かの女の子たちが集まり,一斉に視線がシンジに集まる。
「誰この人……」
「痴漢……」
「ははん、梨央奈先輩の彼ですか?」
「違うから!」
梨央奈は叫んだ。
「この人が私たちBBB部の監督をしてくれる城シンジくんよ。」
「あっどもよろしく。」
シンジは慣れない挨拶をする。
「初めまして、私は笹倉こんといいます。いいですか?殿方がくるなら一つ言っておかなければならないことがあります。」
長い黒髪の女の子で、しっかり者らしい笹倉こん。
「部室内でハレンチな事は許しませんから。あと必要以上に近寄らないで」
キリッとした目で睨まれてしまった。
「って城ってあの城シンジ?あたしファンなんだよね。サインちょうだい!」
再び思いっきり柔らかいものが押し付けられる。小麦色の肌の女の子で確か鈴子って呼ばれてたやつだ。
「ふうっ」
「ひゃっ」
耳元で柔らかい息がかかりゾクゾクしてしまう。
「セーンぱい、やっぱ私たちのことエッチな目で見てるんじゃん」
耳元で、ショートボブの黒髪が揺れる。
何だよ。こいつら
梨央奈の方を見ると案の定顔が引き攣っている。
「ふっふっへへへ。そうなんだ。やっぱり、監督なんてただの変態だったんだ」
こんと梨央奈から同時に投げられたアクアボールがシンジ目掛けて飛んでくる。
◇
「はあはあ、なんで,授業終わりなのに走るんだよ」
シンジは梨央奈の手に引かれて走る。
「BBBはビーチでやるんだから。早くしなさい。」
時雨高校からすでに,近くのコンビニを抜け、山道を走っていた。
先程見なかった小柄な少女や何人かが追加されてみんな、体操服でシンジの後を走る。
「どこ行くんだよ。」
梨央奈が答える。
「海」
その言葉通りに山道を抜けると、青い海岸線が広がっていた。
春のビーチには、何人かの人だかりができていた。
「シンジにはまず練習試合を監督してもらって覚えてもらおうと思うの。」
「でも9人しかいないのにどうするのですか?」
こんが体操服を着たまま言うと、梨央奈は得意げになる。だけど……ランニングした後の体操服は、汗で濡れていて、こんや梨央奈の体のラインがよくわかる。
だめだ。急いで目を離すと、蒼い髪をウェーブした女の子が地面に足をつけて背中を伸ばしながら手を砂浜につける形になっている。
「うわ」
「にゃにゃ?」
「セーンぱい?」
耳元でまた声がする。梨央奈がジト目で睨む。この展開何度目だよ。
結局梨央奈の考えたのは、BBBを簡単にした5対4に分かれて行うゲームらしい。
シンジのチームは天須梨央奈、御手洗鈴子、美登あずさ、福山ルカ。こんのチームは、笹倉こんと何人かの部員たち。
「で俺は何するんだ。」
「まあ見ててよね。」
そう言うと梨央奈は体操服を脱ぎ始める。
「チッちがう!これは見ないで」
「ああ悪い」
シンジが目を開けると、エメラルドブルーのポニテが、真っ白な水着に映える。
慌てて目を逸らすと黒の水着や、赤色で……。
「ポジションはどうする?私は、投手だけど、4人だから振り分けたいけど……」
「とりあえず元のポジションで見たい」
青い細波の中で一回表が始まる。
天須梨央奈は、例のフォームで、捕手の美登あずさに向かって投げ込んだ。
蒼白い幕で包まれた中に水みたいな液体が詰まったアクアボールが変化しながら、次々に打ち取っていく。
「もう!打たなきゃ説明にならないじゃない!」
「天須さんのを打つなんてなかなかできないですよ」
三者三振で一回を終える。
相手の笹倉こんは、完全なサイドスローみたいだ。
スライダーをテンポよく入れていく。
風に揺れて普通より大きく曲がるスライダーを枠内にしっかり決めてくる。
梨央奈がバットに当てた。ダウンスイングからゴロは、ピンポン球みたいな勢いで地を張っていく。
バウンドした球が風に吹かれて更に勢いを増した。
「いっけえ」
向こうは、内野手だけにしていた関係でこの回3点を取った。
「いやん先輩」
左打席に立った、福山ルカにスライダーがぶつかる。
「あのコントロールのいい笹倉がかよ。」
「チッルカのやつわざとだな。」
その次の瞬間、ルカの紫色の大人風ビキニの片方の紐が切れて,ブラが外れた。
ルカは挑発するように、こっちを見ていて,後少しで見えそうだったのに……
突然視界が真っ暗になる。梨央奈の両手で塞がれてしまったみたいだ。
梨央奈の息遣いと柔らかなものが当たる。あいつ気づいてない。
「シンジ。替えの水着を。」
慌てて換えの水着を持っていくと、一塁ベース上のルカがニヤニヤしてる。
「先輩?私先輩に見せたいものがあるんで,このままやりまーす」
さすがに、訳がわからない。シンジが意味を聞くと、梨央奈が教えてくれた。
「あっあのバカっ。あのね、噂ではね。パージされた格好のままだと普段とはちがう力が出るみたいな都市伝説があって。だけど、そんなの嘘」
結局その必殺技とやらはこの回は見ることができなかった。
「いくわよ。」
梨央奈チームが守備につく。梨央奈は思いっきり腕を振り上げた。
結局試合は梨央奈チームが勝利した。
「やったあ!」
「もぐもぐ。勝ったわ。もぐもぐ」
「おいあずさっ一人で食べるなよ。あたしも食べる」
鈴子が、キャッチャーマスクを外してすぐポテトチップスをポリポリ食べ始めたあずさという女の子に近づきながら言った。
「もうっあずさも鈴子も!シンジもなんか言ってよ」
そう言って前屈みに、こっちをみてくるけど水着からはみ出そうなモノがチラついて。じゃない……。
「シー君あそーびましょ」
耳元でふわっと甘い香りが広がる。
「おい」
振り返りかけてシンジは止まる。
そう言えば水着がパージとか言ってたよな。今振り返ったら……。
「ふっふっふ、はいてるでしょうか?」
ルカのやつ。
「なんなんですか!せっかく練習試合が終わったと言うのに。」
笹倉こんがルカを引きずっている音がする。
恐る恐る振り向くとルカはバスタオル姿で頬を膨らませていた。
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