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第9話 / 全9話
三日後、ようやく次の村がぽつりと姿を現した。
しかし、そこは墓場のように静まり返っていた。茜色の夕陽が、崩れかけた土塀と茅葺き屋根を長く引き伸ばし、影だけが濃くなっていく。
「……おいおい、こりゃあ傑作だ」
悟空が鼻をひくつかせ、愉快そうに吐き捨てた。
「犬っころ一匹たりとも見えねえが・・・・」
「静かだな」
玄奘は馬の手綱を緩めず、冷ややかに村を見渡した。
「そうじゃあねぇ。かくれんぼより鬼ごっこの方が性に合ってるんだがな」
悟空は、わざと足音を高く鳴らして歩き出した。
「飯屋を探すか? それとも、隠れてるネズミどもを炙り出すか?」
「余計な真似はするな。…どこか休める場所を…」
玄奘は、悟空を無視するかのように、別の方向へ馬を進める。
「お、おいおい」
悟空は慌てて従う。
二人が村の中心へと足を踏み入れると、そこには異様な光景が広がっていた。
広場の中央、急ごしらえの祭壇に、一人の若い娘が縛り付けられている。衣服は剥ぎ取られ、白い肌には無数の擦り傷と、煤のような汚れがこびりついていた。娘はすでに気を失っているのか、ぐらりと頭を垂れ、虚空を見つめている。
「おっ、と」
悟空が口笛を吹いた。
「こりゃまた、随分と豪勢な飾りもんだな。死にかけだが、女の形はしてる」
彼は娘の苦痛など意に介さず、品定めをするようにその周囲を回り始めた。
「へぇ……腰つきは悪くねぇ。だがあんたに比べりゃ、肉が足りねえな」
玄奘の声が鋭く飛んだ。
「目は腐ってもついているようだな、猿」
「あ?」
「見世物ではない。さっさと縄を切れ」
「へいへい。猿使いの荒いこった」
悟空が面倒くさそうに跳躍し、祭壇へ足をかけた、その時だ。ドッ、と足元の板が軋む音に反応するように、四方の家々の影からそれらは湧き出した。
「――触れるなッ!!」 「その娘は捧げものだ!!」
悟空は祭壇の上にしゃがみ込み、けたたましく吠えるそれらを見下ろしてニタリと笑った。
「わっ、と。出た出た、ネズミの大群がよ」
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