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第4話 / 全4話
翌朝。
窓から差し込む朝日で目が覚めた。
いつもならもう少し布団の中でゴロゴロしているところだが、今日は違う。
目を開けた瞬間から胸が高鳴っていた。
(運命ポイント。)
(まずは一ポイント。)
昨夜見た画面を思い出す。
運命ポイントを集めれば、ガチャの内容が変化する。
つまり、強くなるためには戦わなければならない。
「よし。」
レオンは勢いよくベッドから立ち上がった。
ガチャで手に入れた装備を一つずつ身につける。
布の服。
革靴。
革の手袋。
腰には初心者ナイフ。
左腕には木の盾。
鏡に映る自分を見る。
(初心者冒険者って感じだな。)
少しだけ笑ってしまった。
部屋を出ると、庭で父が剣の手入れをしていた。
砥石を滑らせる音だけが静かに響く。
「おはよう。」
「おはよう、父さん。」
父は顔を上げると、レオンの装備へ目を向けた。
「そのナイフ……。」
腰の初心者ナイフを見つめる。
「村では見ない形だな。」
「うん。」
一瞬だけ言葉に詰まる。
ガチャで出ました――なんて説明しても信じてもらえない。
「運よく手に入ったんだ。」
嘘ではない。
父はそれ以上追及せず、小さく頷いた。
「悪くない。」
「え?」
「武器は高価なものほど強いわけじゃない。」
父は立ち上がり、自分の剣を鞘へ納める。
「大事なのは、それをどう使うかだ。」
その言葉には重みがあった。
元Aランク冒険者。
数え切れないほどの戦いを経験してきた父だからこそ言える言葉だった。
「今日は森へ行くつもりか。」
「うん。」
「止めはしない。」
父は静かに笑う。
「ただし、一つだけ約束しろ。」
「約束?」
「生きて帰ってこい。」
レオンは少し驚いた。
危ないから行くな――ではない。
父は最初から、送り出してくれるつもりだったのだ。
「……うん。」
「約束する。」
父は満足そうに頷く。
「それでいい。」
レオンは深く一礼すると、家を後にした。
◇ ◇ ◇
ベルン村を出ると、石畳の道はすぐに土の道へ変わる。
朝露に濡れた草が風に揺れ、小鳥たちのさえずりが森へ響いていた。
目の前に広がるのは、ルクスの森。
ベルン村のすぐ北に位置する広大な森だ。
薬草や山菜を採りに来る村人も多いが、森の奥にはゴブリンやウルフなどの魔物が生息している。
そのため、新人冒険者が最初に腕試しをする場所としても知られていた。
レオンはゆっくりと森へ足を踏み入れる。
空気が変わる。
村の穏やかな雰囲気とは違う。
葉が揺れる音さえ、どこか警戒心を煽る。
(いる……。)
まだ姿は見えない。
それでも、この森には確かに魔物がいる。
レオンは右手で初心者ナイフの柄を握り締めた。
その瞬間だった。
ガサッ。
茂みが大きく揺れた。
反射的に木の盾を構える。
次の瞬間、茂みの奥から小さな影が飛び出した。
緑色の肌。
尖った耳。
黄色く濁った目。
手には木の棍棒。
「ゴブリン……!」
体長は子どもほどしかない。
それでも、人間を襲う立派な魔物だ。
ゴブリンはレオンを見つけると、耳障りな叫び声を上げながら一気に距離を詰めてきた。
「ギギャァッ!」
(速い!)
想像以上だった。
慌てて木の盾を前へ出す。
ドンッ!
棍棒が盾を叩き、鈍い衝撃が腕へ伝わる。
「くっ……!」
思わず数歩後ろへ下がる。
腕が痺れる。
(こんなに力があるのか……。)
ゲームのゴブリンとは違う。
目の前にいるのは、本物の魔物だ。
心臓が激しく脈打つ。
怖い。
逃げたい。
そんな気持ちが頭をよぎる。
だが、その一瞬の迷いをゴブリンは見逃さなかった。
「ギャッ!」
再び棍棒を振り上げる。
レオンは横へ転がるようにして避けた。
棍棒が地面を叩きつけ、土が大きく舞い上がる。
(今だ!)
レオンは立ち上がる勢いのまま、初心者ナイフを振るった。
ザシュッ!
刃がゴブリンの腕を浅く切り裂く。
「ギギィッ!」
ゴブリンが苦しそうな声を上げ、後ろへ飛び退いた。
(効いた!)
初心者ナイフでも通用する。
少しだけ自信が湧く。
しかし、その時だった。
ガサガサッ!
背後の茂みが大きく揺れる。
「まさか……!」
振り返る。
そこには、もう一匹のゴブリンが立っていた。
「二匹!?」
額を冷たい汗が流れる。
さっきまで一匹相手でも精一杯だった。
それが二匹。
一気に状況が変わる。
二匹のゴブリンは視線を交わすと、左右へ分かれてゆっくりと距離を詰めてくる。
(挟まれる……!)
逃げ道がなくなる。
レオンは周囲へ素早く視線を走らせた。
木。
岩。
茂み。
そして少し離れた場所に、大きな倒木が横たわっている。
(あそこなら……。)
二匹を同時には相手にできない。
なら、一匹ずつ戦える場所へ誘導するしかない。
レオンはあえて倒木へ向かって走り出した。
「ギャッ!」
「ギギャ!」
二匹のゴブリンが後を追う。
距離は縮まる。
もう少し。
もう少しだけ――。
レオンは倒木を飛び越えた。
だが、ゴブリンは勢い余って飛び越えられない。
一匹が倒木につまずき、大きく体勢を崩した。
(今だっ!)
レオンは迷わず踏み込み、初心者ナイフを振り下ろした。
刃はゴブリンの胸へ深く突き刺さる。
「ギ……。」
短いうめき声を残し、一匹目のゴブリンは黒い粒子となって消えていった。
しかし、安心する暇はない。
もう一匹が棍棒を振り上げ、レオンへ飛びかかってきた。
木の棍棒が目の前まで迫る。
避けきれない。
レオンは反射的に木の盾を突き出した。
ドォンッ!
激しい衝撃が腕を駆け抜ける。
「ぐっ!」
木の盾がきしむ。
だが、砕けない。
(耐えた……!)
その一瞬の隙だった。
ゴブリンの体勢がわずかに前へ崩れる。
(今しかない!)
レオンは盾で相手を押し返し、その勢いのまま一歩踏み込んだ。
初心者ナイフを握る右手に力を込める。
「はぁぁぁっ!」
ザシュッ!
刃がゴブリンの胸を深く切り裂いた。
「ギャァァッ!」
ゴブリンは苦しそうに叫び、数歩よろめく。
それでも倒れない。
(まだか!)
レオンは追撃する。
もう一度。
もう一度だけ。
ナイフを握り直し、渾身の力で振り抜いた。
ズバッ!
今度こそ急所を捉えた。
ゴブリンの身体がゆっくりと崩れ落ちる。
そして、一匹目と同じように黒い粒子となって風へ溶けていった。
静寂が訪れる。
「はぁ……。」
肩で息をする。
足が震えていた。
ゲームとは違う。
モニターの向こうじゃない。
目の前で、本当に命を懸けて戦ったんだ。
その実感が遅れて押し寄せてきた。
「勝った……。」
その瞬間だった。
――ピコン。
聞き覚えのある電子音が頭の中に響く。
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図鑑更新
魔物図鑑
No.001
ゴブリン
登録
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<図鑑>
群れで行動することの多い低級魔物。
知能は低いが油断すると命を落とすこともある。
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運命ポイント
+1Pt
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「きた!」
思わず小さく拳を握る。
画面が次々と切り替わる。
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初討伐達成
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初戦闘達成
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ガチャ品質
上昇
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その文字を見た瞬間、自然と笑みがこぼれた。
「やっぱり……!」
予想は当たっていた。
運命ポイントを集めれば、ガチャは強くなる。
歴代のガチャ師は弱かったんじゃない。
きっと、この仕組みに気付けなかっただけなんだ。
「だったら。」
レオンは森の奥へ視線を向ける。
「俺が、この職業を一番強くしてみせる。」
◇ ◇ ◇
夕方。
レオンは無事にベルン村へ戻ってきた。
母は泥だらけの服を見て驚いていたが、大きな怪我がないことに胸をなで下ろした。
父は何も聞かず、小さく頷くだけだった。
その表情には、ほんの少しだけ安堵の色が浮かんでいた。
食事と風呂を済ませ、自室へ戻る。
扉を閉めると、レオンは静かに息を吐いた。
「さて……。」
目の前に画面を開く。
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無料10連
READY
運命ポイント 1Pt
ガチャ品質 UP
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昨日とは違う。
たった1ポイント。
それでも、この1ポイントは自分の力で勝ち取ったものだ。
レオンは静かに笑う。
「今度こそ。」
ゆっくりと『START』へ指を伸ばした。
(第5話へ続く)
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今日も読んでいただき、本当にありがとうございます!
ついにレオンが初めて運命ポイントを獲得しました。
次回は、運命ポイントで変化した無料10連ガチャ! 何が飛び出すのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。
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