読み込み中...
読み込み中...
第1話 / 全4話
青い光が、スマホの画面を駆け上がる。
「……まぁ、ここまでは普通。」
ベッドに寝転んでいた神谷湊は、いつものように画面を眺めていた。
次の瞬間。
青は黄金へと変わる。
「おっ?」
思わず上半身を起こす。
金演出。
ここまでは何度も見てきた。
しかし――。
画面いっぱいに虹色の光が弾けた。
「よっしゃぁぁぁ!!」
勢いよくベッドから立ち上がる。
だが、演出は終わらない。
バキィィィンッ!!
ガラスが砕け散るような轟音。
画面そのものに無数のヒビが走る。
「……え?」
こんなのは見たことがない。
スマホが細かく震え始める。
虹色だった光が、一瞬で漆黒へと染まった。
『ERROR』
真っ赤な文字が画面中央に浮かぶ。
「……は?」
思わず画面へ顔を近づける。
ブゥゥゥン――。
スマホから聞いたことのない低い振動音が響く。
同時に、部屋の照明までチカチカと点滅した。
「な、なんだこれ……!」
文字がゆっくりと書き換わる。
『UNKNOWN』
その下に、見たこともない紋章が浮かび上がった。
胸が大きく高鳴る。
鼓動が耳の奥まで響く。
「こんなの……見たことねぇぇぇぇぇ!!」
――数時間前。
◇ ◇ ◇
「湊! 今日だろ?」
放課後。
教室で鞄をまとめていると、友人の健太が笑いながら声をかけてきた。
「ああ。」
湊は即答した。
「今日の無料十連。」
「やっぱりそれか。」
「今日だけは違う。」
真剣な顔でスマホを握る。
「新キャラ実装だぞ?」
「知ってる。」
「限定。」
「知ってる。」
「排出率〇・五パーセント。」
「もちろん知ってる。」
「……今日の数学は?」
「知らない。」
「お前なぁ!」
教室中が笑いに包まれた。
神谷湊。
高校二年生。
勉強も運動も人並み。
だが、ガチャへの情熱だけは誰にも負けない。
課金はほとんどしない。
毎日コツコツ石を集め、イベントは欠かさず走り、無料ガチャの日はカレンダーに印を付けるほど楽しみにしていた。
「じゃ、帰るわ。」
「今日は神引き期待してるぞ。」
「任せろ。引いてくる。」
そう言って教室を飛び出した。
◇ ◇ ◇
「湊ー! ご飯できたわよー!」
一階から母の声が響く。
「あとでー!」
「またガチャ?」
「五分だけ!」
制服を脱ぎ捨て、自室へ飛び込む。
スマホを机に置き、大きく深呼吸する。
時計は十九時五十九分。
あと一分。
「頼むぞ……。」
二十時。
無料十連のボタンが光った。
迷わず押す。
青。
「まぁまぁ。」
金。
「おっ?」
虹。
「来たぁぁぁ!!」
ここまでは良かった。
本当に良かった。
その先があった。
画面が砕ける。
虹が黒く染まる。
『ERROR』
『UNKNOWN』
見たこともない紋章。
スマホが震え続ける。
「これ……なんだよ……!」
呼吸が速くなる。
鼓動が耳の奥まで響く。
画面から目が離せない。
「頼む……!」
スマホを両手で握り締める。
「頼む……いいの、当たってくれ……!」
演出は、まだ終わらない。
「お願いだから……!」
見たこともない光が画面いっぱいに広がる。
「頼む……!」
喉が渇く。
息が苦しい。
それでも目だけは画面に釘付けだった。
「早く結果を見せてくれぇぇぇぇぇ!!」
その叫びを最後に。
神谷湊の意識は、音もなく途切れた。
◇ ◇ ◇
真っ白な世界だった。
「……あれ?」
ゆっくりと体を起こす。
目の前には、白いローブをまとった青年が立っている。
「お目覚めですか。」
「……ここ、どこ?」
「あなた方の言葉で言えば、神のいる場所です。」
湊は数秒だけ考えた。
そして勢いよく立ち上がる。
「結果!」
「はい?」
「ガチャ!」
「……ガチャ?」
「最後に引いたガチャの結果! まだ見てないんだけど!」
青年は少し困ったように首を傾げた。
「申し訳ありません。それは私の管轄ではありません。」
「そんなぁぁぁぁ!!」
膝から崩れ落ちる。
「人生最後の神引きだったかもしれないのに……!」
青年は静かに微笑んだ。
「あなたには、新しい人生が用意されています。」
「だから結果だけ!」
「では、参ります。」
「待って!」
白い光が視界を包む。
「待ってぇぇぇぇぇぇ!!」
その叫びだけを残して、神谷湊の意識は再び闇へ溶けていった。
――この時の俺は、まだ知らなかった。
あの日見られなかったガチャの結果が、世界の運命を変えることになるなんて
(第2話へ続く)
────────
第1話を読んでいただき、ありがとうございました!
次回からはいよいよ新しい世界での物語が始まります。
面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価、感想で応援していただけると励みになります!
この話はいかがでしたか?
この作品を評価する