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第1話 / 全14話
「暑っっっっつ……」
ペットボトルの水を飲む。ぬるい。
俺の名はケイジ。フリーターだ。
たまに短期バイトをする。
生活はハッキリ言って苦しい。
エアコンも冷蔵庫もない。文明人として終わってる。もちろんテレビなんてものは最初から買う気もない。
スマホはある。娯楽・情報は全てスマホ。
自炊はしない。コンビニの電子レンジで十分。
金がないときは漁港へ行く。あそこにはちょっとした食事処があるのだ。
「よう、タカシ!」
「おう、ケイジ!」
タカシは中学時代の同級生で俺の親友だ。
昔はよくつるんでいた。
今は漁師として立派に働いている。自慢の友人だ。
「今日も暑っちいな」
「だよな。日本は亜熱帯にでもなっちまったのかな」
「暑くてやる気起きねえ」
「ハハ、お前がやる気ないのは一年中だろ」
タカシが朗らかに笑う。
「うちで昼めし食ってけよ」
「今日は何?」
「鍋」
「真夏に鍋!? ナンデ鍋!?」
「暑い時こそ鍋だよ」
タカシたち漁師は規格外の市場に出せない魚を自分たちで食っている。
「この魚、何? ちっちゃくない?」
「まだ若いからな。その代わり脂は滅茶苦茶乗ってる」
「どれくらい?」
「通常の三倍。いや七倍はあるかもな」
「すげえ! 焼いたら旨そう」
「ところがどっこい。焼くと脂が全部落ちて身はパサパサ。焼き魚として使えねえ」
「無能じゃん」
「だから鍋にする。コクがあって旨いぞ」
クーラーが涼しい。
「はぁああ~。生き返るわぁ~」
「ケイジ! もうすぐ出来るぞ。早く食おうぜ」
「おう!」
味噌の香りが食欲をそそる。
「うめえ! やっぱ暑い時こそ鍋だな!」
「だろ? 今日は具材が良かったらアタリだな」
「そうなの?」
「さっきの魚、たまにしか獲れないからな。一万匹に一匹しかいない」
「超希少じゃん。高く売れないの?」
「安定供給できないからダメだよ。それにさっき焼き魚として使えないって言ったろ?」
「ああ~、確かに!」
漁師鍋、どんぶり飯で五杯は軽く行けた。
「はあ~、食った食った。腹いっぱい」
「ハハ、お前はいつもうまそうに食うよな! 午後はどうすんの?」
「街で掘り出し物でも探すかな。転売できそうなやつ」
「ハハ、お前は自由だな。また昼めし食いに来いよ」
「おう、サンキューな!」
俺は気まぐれに港をぶらぶら歩くことにした。
みんな忙しく働いている。
「暑っっっっつ……」
もう暑い。折角クーラーで冷やした体にもう熱がこもっている。
ふと見ると、巨大な冷凍施設が目に入った。
大手水産加工会社の建物だ。
「めっちゃ涼しそう」
あそこで少し涼んでから街に帰ることにした。
入口は大きく開いていた。作業員の目を盗んで施設に忍び込む。
「はぁああ~。涼しい~。というか、むしろ寒い?」
じっとしてるより体を動かしながら涼んだ方がよさそうだな。
俺は中を見学しながら建物の奥へと進んでいった。
室温計。氷点下三十五度。
「──氷点下……三十五度!?」
どうりで寒いわけだ。こんなところにずっといたら凍死してしまう。
「体も十分冷えたし、そろそろ戻るかな?」
──ガチャン!!!
そのとき、大きな音とともに一斉に部屋の照明が消えた。
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