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倉庫脱出編 / 第4話
「SNSでは、The War of the Worlds(宇宙戦争)って、H.G.ウェルズの古典SFでタグ付けされて拡散してた」
「!?ネット生きてるんですか?」
カイは腰のダンプポーチからスマホを取り出したが、相変わらず圏外だった。
「圏外だよ。衛星ネットがたまに繋がるけど」
見るかい?とスーツの男は自分のスマホを差し出した。
受け取ったスマホの画面には、SNSのタイムラインが表示されている。
投稿されたポストには、ビルの間から巨大なクラゲが空中に浮かぶ姿、爆発の画像、トンボのような黒い影が無数に飛び交う動画が撮影されていた。
その中でもショッキングだったのは、黒い影が次々と人々に襲い掛かり、掴んでそのまま飛び去る姿だった。
「エイリアンの目的はアブダクション(誘拐)ではないか、という推測も出てる。奴らは人を攫うが、人型の軍事ロボットは容赦なく破壊する。タイムラインの中に中国のロボット兵士の動画があるから見てみるといい」
カイはタイムラインを上下にスクロールさせ、それらしき動画を再生した。
整列して火器を発射するロボット兵士を容赦なくなぎ倒す黒い影。
ロボットの火器は正確に命中しているがまるで効果がないように見えた。
黒い影に着弾し、大きな爆発がいくつも発生しているが、影はまったく怯むそぶりすらない。
逆にその爆風でロボット兵器が吹き飛んでいる様子が映し出されていた。
「ロボット兵士と人間をしっかり区別しているらしい。人にはこんな風に攻撃しない、ただ捕まえて攫っているんだ」
「中国のロボット兵って最先端でしたよね、まったく通用してないみたいだ」
「ああ、実際に見たが、戦車砲も戦闘機のミサイルも、まるで効果がない。逆に被害が出てそこらじゅうで火事になっていたよ」
「アレは動かないんですか?」
「あぁ、雨が降り出してから急に動かなくなった」
「雨に弱いとか?」
「わからない。雨が降り出したら、飛んでいたやつらも急にいなくなった。ただ・・・」
「ただ?」
「相変わらず攻撃は通じないし、近づいて攻撃すると動き出して反撃する」
「それであの子は助かったが、自衛官が一人、犠牲になった」
女性二人に囲まれて、ずっと俯いたままの少年を見た。
割烹着姿の女性が少年の肩をやさしく抱き、背中をさすっていた。
「あぁ、自己紹介がまだだったね、私は丸菱商亊の徳川と申します。ここの物流センターにはよくお世話になってました」
スーツ姿の男性は胸ポケットからIDカードを取り出して、カイに見せた。
「名刺は基地から逃げるときに落としたみたいでね、IDカードですまないが」
「佐倉です、佐倉 櫂です」
「宜しくね、佐倉くん」
徳川が右手を差し出してきて、カイと握手した。
「君がいてくれて良かった、ところで・・・」
「この会社の事務所ビルには入ったこと、ある?」
——女性自衛隊員の仙川は、厨房の中を調べていた。
厨房を一周した後、ヘルメットに固定していた暗視装置を下ろし、勝手口に手をかけ、ゆっくりと回して外に出た。
雨は横殴りにいっそう激しくなっている。
ここは位置的には建物の裏手にあたるようだ。
左手には別の倉庫の建物、その奥にはフェンスがあり、細い道路を挟んでスーパーマーケットらしき建物が見えた。
スーパーの向こうは、大きな国道に繋がるバイバスと、国道の法面が見えた。
暗視装置をサーモ画面に切り替え、さらに目視する。
バイバスの先の国道2号線上に、いくつか小さいが熱反応が確認できる。
人型ではない。妙に細長く、そして相対距離から察するに、かなり大きい。
仙川は静かに厨房に戻ると、音をたてないよう勝手口を閉めた。
「こちら04、現在地、倉庫裏手より国道2号の状況確認」
『01から04、状況どうか』
「国道上にアンノウン2体、北西方向、距離2キロ程度」
『地上体か、飛翔体か』
「飛翔体が着地し停止している模様」
『01了解。国道は無理だな。引き続き報告を待つ。』
仙川は勝手口から一番近いシンクの蛇口をひねったところ、変わりなく水が流れた。
予備の水筒のキャップを外し、キャップを器にして水を貯め匂いを確かめた後、少し口に含む。
異常はないようだ。
仙川は水筒に水を貯めて腰のポーチに収納すると、再び通信機のスイッチを入れた。
「04より01、食堂で水道水を確保。喫食可能」
『おーそうか、良かった。終わり』
『05より01、食堂の安全を確保。暫くは雨風しのげそうだぜ~』
仙川からの通信が終わった後、葉月からの通信が入った。
「01より05、ご苦労さん、少し休め。民間人の皆さんの様子はどうか」
01・・・八代 創は眼前に装着しているHMDに投影されている視界に注意深く目を配る。
薄暗いコクピット内は、コンソールパネルのLEDがわずかに緑色に発色しているだけで、ヘルメットに固定されたHMDに、機体の状況、周囲の状況がステータス表示されていた。
八代の視界の先には、500メートルほど先で行動停止している、異形の物体—エイリアンの姿があった。
それは熱を帯びて水蒸気のようなもやが出ているが、まったく動く気配がない。
『05より01、可能であれば皆さんを暫く休ませたい。保護した少年もショック状態の様子。敵さん寝てるんなら俺らも交代で休んだ方がよくね?』
「05、通信は簡潔にな。敵勢力に動きなし。電池切れたみたいに動かねぇ。」
『05了解。マジ充電中だったりして(笑) じゃぁ皆さんに休息をとってもらいますわ。終わりィ』
八代は(はぁ・・・)と溜息を付いた後、通信のスイッチを入れなおした。
「01より02、お前も休息をとれ。2時間交代だ」
『02了解。キャリアに繋いで給電しとく』
八代は通信を切り、鼻から大きく息を吐いて、ぼんやりと外を眺めた。
相変わらず雨は降り続けている。
水筒を取り出し、水を一口含む。
「腹減ったなぁ・・・ラーメン食いてぇ」
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