読み込み中...
読み込み中...
第13章 正体 / 第228話
目の前の人は柔らかな笑みを作って首を横に振る。
「俺はルイスじゃない。けど、こんな姿では、間違われても仕方ないな。どうすれば奴じゃないと証明出来る?」
「おでこ見せてみろ! 違うんなら魔導石がついてねー筈だからな!」
アレクが息巻くと、彼は一度だけ小さく頷いた。
「これで良いか?」
彼は前髪を後ろへと掻き上げる。そこにある筈の物がない。
「これで分かったか? 俺が奴じゃないってことが」
彼がルイスではないことは理解した。では、この人は誰なのだろう。疑問が渦巻く中で、アレクとフレアは横に広げていた両手を下げる。私の手を握るクラウからも少し力が抜けた。
「じゃー、オマエは誰なんだ? 魔法でここに来たんだよな?」
アレクの問いに、その人は小さく鼻先で笑い、頭から手を離して私たちを見据える。
そう言えば、この人の声はどこかで聞いた事がある。一体、どこで――。記憶の僅かな残像を探していると、小さな突破口にたどり着いた。そこからするすると糸が手繰り寄せられ、あの時に聞いた声が鮮明に蘇る。
「貴方~!」
この声色、話し方――間違いない。考えるよりも声が先に出ていた。確かにあの時、この姿で私の前に現れていたら、私は気を失っていたかもしれない。
クラウやアレク、フレアは私に顔だけを向け、眉間にしわを刻む。
「ミユ……?」
「この人……って、人じゃなくて神様なんだけど……う〜ん、とにかく!」
怪訝そうな顔を向ける三人にどうしても教えたくて、現れた人物を指さし、叫んだ。
「この人がオニキスだよ〜!」
「はあっ!?」
突然現れた人物が神だなんて、信じられる訳がない。それは分かるのだけれど、もっと私の言葉を信じて欲しい。私とオニキスを見比べる三人に不満が募り、頬を膨らませた。使い魔の秘密を教えてくれたのは、絶対にこの人なのに。
一番最初に反応してくれたのはクラウだった。
「それでも近寄らせる訳にはいかない! ミユがまた闇に当てられでもしたら……!」
「闇に当てられる?」
オニキスは不思議そうに小首を傾げる。
「じゃなかったら、ミユが倒れるなんてこと――」
「誰に言われた?」
「火の神様」
「ガーネットか……」
オニキスは眉間にしわを寄せ、「うーむ……」と考え込んだものの、結論はすぐに出たらしい。私たちを見据え、口を開いた。
「エメラルドのせいにするならまだしも、俺のせいにするとはな。もう黙っていられるのも限界だ。他の神にも共に会ってもらおう。それなら闇に当られるなんてことはないのも理解してもらえるし、お前らの疑問も解決される筈だ」
オニキスは私たちから視線を外し、今度は王たちの方を見る。
「各国の王たちよ、魔導師たちを借りても良いか?」
王たちは生唾を飲み込み、静かに頷いた。そうするしかないとでも言うように。
「じゃあ急ごう。早いに越したことはないからな」
私たち魔導師の意見も問われないまま、オニキスの足元から魔法陣が浮かび上がる。それは段々と拡大し、私たちを飲み込んでいく。
浮遊感が消え去ると、ゆっくり瞼を開けていく。周りは白一色――果てしない虚空の世界が広がっている。地に足が着いているのに、床は見えない。まるで宙に浮いているかのようだ。
そして、目の前には何度か見た巨大な鳥の足がある。視線を左右に動かしてみれば、それが八本――恐る恐る見上げると、左から黄、赤、緑、青と丸々とした鳥、ううん、神の眼光が突き刺さる。その視線は、一列に並んだ私たちの端にいるオニキスへ向けられている。あまりの圧迫感に小さな悲鳴が漏れてしまう。私だけではなく、他の三人もだ。
「久しぶりだな、お前ら」
臆することなく、オニキスは四柱の神にウインクしてみせる。
「貴様、何をしに来た? 我らは袂を分かちた筈だろう」
オニキスが現れたことを快く思っていないのだろう。地と水の神はオニキスのことを鋭く目を細めて見ているようだし、火の神は翼をばたつかせて見える。風の神はくちばしを動かしているようでもある。
「魔導師たちに王たちから圧力がかかってるのを知らない訳じゃないだろ? 見かねて出てきてやったって訳さ」
腕を組み、不敵な笑みでオニキスは神を見上げる。
「我らは貴様に頼んだ覚えはない。それに今、貴様が地球を離れたらどうなると思っている」
「それは大丈夫だ。オパールに頼んであるからな」
言い切ると、オニキスは神様に向かって指をさし、「それより――」と話を続ける。
「お前ら、その喋り方は何だ? 前は砕けて喋ってただろ。『我』なんてお前らには似合わねぇよ」
その言葉に、神の目つきが一層鋭くなった気がした。何かしゃくに障ることでも言っているのだろうか。予想通り、風の神が不愉快そうに翼をばたつかせた。
「魔導師たちの前で何を言う!? これは我らだけの秘密ではないか!」
一方、オニキスは涼しい顔で口角を上げる。
「魔導師たちも知る権利があると思うぜ? 隠し通すのはお前らのエゴだ。そうだろ? トパーズ」
「我は賛同出来はしない!」
「そうだ! 魔導師たちのためにも、知らぬままであるべきだ!」
「トパーズもガーネットも相変わらず固いな」
話の内容から、風の神がトパーズで、火の神がガーネットであることは理解した。神の名前がそのまま国名として浸透しているらしい。
この話はいかがでしたか?
この作品を評価する