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第11話 / 全23話
スイが目を丸くする。
「……突然どうしたの?」
階段の手すりの外側には本を詰めた段ボールが何箱も積まれている。そのうちのいくつかが崩れ、本が死体の近くまで散乱していた。
「ここには段ボールが倒れてるよな?」
「は、はい……真田パイセンが階段から落ちちゃった時に……引っかけて一緒に倒れたんすよね?」
俺は二人に向き直り、階段の手すりの外へ手を伸ばしてみせる。
「よく見ると、手すりと積まれたダンボールには少し距離があるんだ。もし部長が落ちた時引っかけたとして、手すりの外へかなり手を伸ばしていないと届かないんじゃないか?」
「……あ! ほんとっす!」
千夏が目を見張る。部長が落ちた時に倒れたならもっと近くにないとおかしい。
スイが唇に指を当てて推測を口にした。
「……元から段ボールが倒れてたんじゃない?」
「いや、それはあり得ない。これを見てくれ……先輩の髪の上に本が重なってる」
彼のさらりとした髪は血に濡れて固まってしまっている。その上に本が落ちていた。つまり、彼が倒れてから本が落ちてきたのだ。
「……なるほどっす、ということは……」
千夏が顎に手を当てて頷いた。続けて俺が声をあげる。
「ただの転落死じゃない。……少なくとも、現場の状況が噛み合ってない!」
「……それって、どういうこと?」
スイが意味が分からないというようにふるふると首を振りながら問う。
「事故じゃないかもしれない。誰かが関わっている、とか……?」
俺がそう口にすると、周囲の空気が一気に重くなった。
「え……!? それって、誰なんすか……!?」
「分からない。けど、俺は……」
胸の奥がかき回されるようだった。
「……とにかく、警察に電話」
スイがスマホを取り出して電話をかける。その手元はわずかに震えている。
「もしもし……はい、学校の図書室の書庫で、人が倒れてます。頭から血を流していて……! とにかく、早く来てください。……え、人手不足でしばらくかかる……?」
俺はごくりと唾を飲み込む。助けはすぐには来ないのだ。
スイはしばらく電話を続けたが、とうとう諦めて切った。千夏が怯えた声で言う。
「あ、あたしたち、どうすれば……?やっぱここは大人しく警察に任せて……」
その言葉に俺の胸に疑念が沸く。
……もしこのまま警察や大人に任せたら、俺は見ていることしかできない。部長の死は事故として片付けられて、この違和感も見過ごされるかもしれない……。
そんなのは、嫌だ!
「待ってくれ。……俺は、俺は――部長がどうして死ななきゃいけなかったのか知りたい!」
スイが目を丸くしてこちらを見つめる。
「……え?それって……真田先輩の死について、調査するってこと?」
俺は段ボールの違和感を知ってしまった。怖いけど……このまま放っておけない。
俺は部長の死体を前に、ぐっと拳を握りしめた。
「……ああ。やってみるよ……部長に恩返しがしたい。こんな俺なりに、できることをしたいんだ」
俺は吐き気に耐えながら周囲をじっと観察する。そして調査に向けて部長の死体の方へ一歩踏み出した。
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