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第一章 火の魔法 FER(フェル) / 第11話
「フェルが水の中で爆発するのは、水がたくさん湯気になるから……かな?」
腕を組んでうんうん唸るカイエに、アミナスはクスリと笑った。
「お嬢様。 魔道士棟の鍛冶場を見たことはありますか?」
「かじば?」
「はい。 魔道具や魔剣を作ったり修理したりしています。 その中に、水がたくさん湯気になる工程がありますよ」
「見たい!!」
カイエはキラキラと目を輝かせて立ち上がった。
◆◆◆
その日の午後。
昼食を終えた二人と一匹は鍛冶場へと向かっていた。
今日のエコーは小さな狐。昼食の席でアミナスの燻製肉を盗んでいた。
ノートをバッグに詰めこんだカイエは、好奇心を隠せずアミナスの手を引っ張る。
「アミナス!! はやく!!」
「わっ! お待ちください!」
魔導士棟の別棟、石造りの平屋から金属を叩く音が響く。
近づく度に様々な音が重なり合い、奥から流れてくる。
カイエは開いている窓から工房を覗き込んだ。
鍛治職人が炉の中に吹子で空気を送り、炎が唸ってゴウッっと吹き上がる。
「わぁー!!」
炉の中から出てきた長い金属は、熱せられて煌々としている。
「……赤く光ってる?」
カーン!カーン!カーン!カーン!
職人がその金属を叩き伸ばして、水の中に入れる。
ジュワアアアアッ!!
白い煙のようなものが、天井へ向かって勢いよく吹き上がった。
「!!!!!」
カイエは思わずアミナスの手を握った。
鍋の湯気とは比較にならない。
あの日見た白い光のあとに吹き上がったものと、よく似ていた。
(事故を思い出したのか?)
その様子に、アミナスはカイエの手を優しく握り返す。
が。
(でっかい湯気!!)
カイエは全然別のことを考えていた。
エコーは工房の匂いが気になるのか、鼻をひくひくさせている。
「お嬢がカイエ様? アミナスから聞いたぜ。」
白い髭をたくわえた、小柄な老人。
だが、丸太のような腕と岩のような胸板が服越しにも分かる。
「あ、はい。 あなたが魔道具の鍛治士さん?」
「ああ。 この城専属の魔鍛治士長アイゼンだ」
アイゼンは胸を張ったまま、軽く顎を引いた。
「アイゼン様。 急なお願いにも関わらず、ありがとうございます。」
アミナスがお菓子の入った箱と、小さな小袋を渡した。袋からはわずかに金属の擦れる音が鳴った。
「いやいや。 お安い御用だよ」
カイエは二人の会話が途切れたのを見計らって、意気揚々とアイゼンに話しかける。
「アイゼン! お水に入れていた赤く光っていたのは何?」
「あれは熱した金属だ。 見せてやろうか?」
「見たい!」
ぴょんぴょんと跳ねるようにアイゼンについて行くカイエ。
ガハハと上機嫌に笑うアイゼンだが、普段はとても気難しく容易に声をかけられないため、アミナスはわずかに息を吐いた。
その時、工房の奥で再び赤く焼けた金属が水へ沈められる。
ジュワアアアアアッ!!
白い湯気が天井近くまで吹き上がった。
カイエはその光景から目を離せなくなっていた。
何(あの日も……これだったのかな)
胸を高鳴らせながら、カイエは工房へ足を踏み入れた。
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