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第一章 火の魔法 FER(フェル) / 第8話
「エコー! もう帰るよ」
カイエが突っつくが、エコーはお菓子の山に夢中で全く動こうとしない。
どんどん減っていくお菓子を見て、カイエは顔を青くした。
「……アミナスのなのに、ごめんね」
「いえ……俺一人じゃ食べきれませんから。 どうぞたくさん食べてください」
「でも……」
項垂れるカイエに、アミナスは少し考えて提案した。
「お嬢様が持ってきてくれたケーキ、たくさんありますし……一緒に食べませんか?」
「えっ」
「暇だったんで、話し相手になってくれると嬉しいです」
申し訳なさでいっぱいだったカイエの顔が、パァッと明るくなった。
「うん!」
エコーは二人の様子を見て、ぷいっと顔を背け、クッキーを齧り続けた。
◆◆◆
アミナスがお茶を淹れ、テーブルにケーキの小皿を並べた。
「熱いので気をつけてくださいね」
「うん」
アミナスは恐る恐る、白黒のリスに向かって声をかけた。
「……エコー様も、どうぞ」
ピクリ。
リスの動きが止まる。
アミナスは言葉を選びながら、静かに言った。
「あの時は……ありがとうございました。俺の力だけでは、お嬢様を助けられませんでした」
エコーはくるりと振り返り、アミナスをじっと見つめた。
それから数枚のクッキーを抱えてテーブルに飛び乗り、ケーキを頬張り始めた。
「エコーとアミナス、知り合い?」
ケーキを食べながら、カイエがきょとんとした顔で二人を見比べた。
「はい……お嬢様を助けるときに、力を貸していただきました。 たぶん」
エコーはケーキを頬張っていたが、しっぽが少しだけふわりと揺れた。
「アミナスも、エコーにお願いしたんだね!」
「……お願い?」
「そう! 私もエコーにお願いしたら、フェルとフェルティアが出るようになったよ!」
「えっ!?」
アミナスは目を丸くした。
(8歳で魔法が使える……!?)
カイエの事故は、幼さゆえの魔力暴走だと思われていた。
10歳未満での魔法行使など、前代未聞だ。
愕然とするアミナスをよそに、カイエは首を傾げた。
「あれ? でも、エコーにお願いする前からフェルは使えてたよね?」
「魔法はいつの間にか使えるようになっていたので……」
「ぼくじゃないよ」
エコーはアミナスを観察しながら、ケーキを頬張る。
「きみが魔法を覚えた時のことは、知らない」
アミナスはカイエに魔法をかけた時のことを思い返す。
『今、許可した』
あの時エコーは、確かにそう言った。
(……であれば、俺の覚醒は別の存在によるもの?)
アミナスはエコーのお皿に自分のケーキを半分追加しながら、呟いた。
「魔法は、誰かの許可が必要……?」
その言葉に、カイエがピンと反応した。
「許可!?」
ガタンッと椅子を鳴らして立ち上がる。
「アミナス!! もう一回言って!!」
「えっ?」
◆◆◆
その後、アミナスは夕方までカイエの質問攻めに遭った。
夕暮れ時、ユリアが心配そうに謝りに来たが、アミナスはかろうじて「大丈夫です……」と答えるのが精一杯だった。
部屋までの帰り道。
ユリアの小言を聞きながら、カイエは悶々と考え込んでいた。
(許可……)
(魔法を使う許可……)
(誰が?)
(なんのために?)
白黒の蝶がカイエの肩にとまる。
エコーは何も答えない。
ただ、ゆらゆらと楽しそうに羽を揺らしていた。
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