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第一章 火の魔法 FER(フェル) / 第3話
翌日。
「アミナス!」
「やあ、お嬢様。 グレン様をお探しですか?」
「ううん。 ちょっとフェルって唱えてみて」
「え?」
カイエは屋敷中を歩き回っては、会う人会う人にフェルと言わせてまわっていた。
今日のエコーはネズミ。カイエのポケットで丸くなって寝ている。
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『
アミナス
フェル → 火がでる。
大きさ → どんぐりくらい
りゆう → なんとなくでる
』
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カイエはノートを書きながら眉をハの字に下げた。
「うーん。また、“なんとなく“かー」
「……申し訳ありません。それ以外に何と言ったらいいか……」
父グレンの新しい部下で、少年魔導士のアミナスが気まずそうに頬をかいた。
カイエは屋敷中を歩き回っては、会う人会う人にフェルと言わせてまわっていたらしく、ノートにはびっしりと結果が羅列されていた。
「ううん。 アミナス、ありがとう!」
カイエはノートを閉じて、アミナスに手を振った。
「お嬢様は、何を調べていらっしゃるのだろう……」
ポツリとアミナスが呟くと、近くの花瓶に花を生けていたメイドがクスクス笑った。
「カイエ様は、魔法がなぜ使えるのか知りたいみたいですよ」
「え?」
「魔法が使える人と使えない人の違いを調べていらっしゃるそうです」
子どもは不思議なことに興味を持ちますよねと笑うメイドをよそに、アミナスは遠ざかるカイエの背を見つめる。
(使える者と、使えない者の違い……そんなの)
「才能だろ……?」
自然と溢れた言葉に、アミナス自身が戸惑いを感じていた。
◆◆◆
「ふぅー。 ちょっと休憩!」
カイエが空を見上げる。もう、お昼の時間はとっくに過ぎていた。
中庭の東屋に座り、厨房でもらったカゴを開けてサンドイッチを取り出す。
すると、カイエのポケットがモゾモゾと動き、エコーが顔を出した。
「もー。 お腹ぺこぺこだよ」
不満げに呟き、エコーはタヌキ姿へ変わってテーブルのサンドイッチを齧り始めた。
カイエもサンドイッチを頬張りながら、ノートを広げる。
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『
とうさま
フェル → 火がでる
大きさ → お皿くらい
りゆう → 気合い
』
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『
イニス
フェル → 火がでる
大きさ → リンゴくらい
りゆう → そういうもの
』
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『
ヒュー
フェル → 火がでない
りゆう → ふめい
』
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『
ユーディ
フェル → 火がでる
大きさ → クルミくらい
りゆう → しぜんに出る
』
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「……」
カイエはパラパラとページをめくり、ため息をつく。
「みんな、わからない……?」
誰も火がでる理由を知らないのだ。
『そういうもの』が、どういうものなのか。
「……フェル」
カイエは何も出ない自分の掌を見つめた。
「ふぉれ(もぐもぐ)、通っふぇなぃよ(もぐもぐ)」
「え?」
エコーはカップの水でサンドイッチを流し込む。
「お願い、通ってない」
「お願い?」
「そう。もう一回ふぇるって言ってみて」
再びサンドイッチを次々と口に押し込みだしたエコーの言葉に、カイエは戸惑いながら従ってみた。
「……フェル」
その瞬間、カイエは胸の奥がカッと熱くなるのを感じた。
そこから体内に染み渡るように、熱が広がる。
体の中を熱が流れる。細い管を通るように。
血管。
「……けっかん?」
またもや知らない言葉が浮かんだ。
カイエの身体を通って手に収束した熱は、いつの間にかロウソクの火のように灯っていた。
カイエは急いでノートにペンを走らせる。
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『
カイエ
フェル → 火がでる
りゆう → エコーにお願いした
メモ
けっかん?
』
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『エコーにお願いした』
カイエはその一文が気になって、ずっと見つめ続けた。
その様子を見ながら、エコーはデザートの赤い実をのんびり咀嚼していた。
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