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第一章 火の魔法 FER(フェル) / 第4話
「フェル」
そう唱えると、胸の奥が熱くなる。
その熱は体の中を流れ、やがて手の先へ集まっていく。
そして小さな火になる。
カイエは何度もフェルを唱えた。
目を閉じて、熱が伝わる感覚を必死に追いかける。
そして、忘れないうちにノートへ書き留めた。
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『
フェル
1、むねの中があつくなる
2、あついのが体の中をうごく
3、手にあつまる
4、火がでる
けっかん?をとおってるかも
』
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「フェル」
ぽっ。
「フェル」
ぽっ。
「フェル」
ぽっ。
何度も何度も繰り返す。
「……ふぅー」
額の汗を袖で拭う。
気付けば何十回もフェルを唱えていた。
カイエは噴水の縁へ腰掛け、水が運ぶ冷気で涼んでいた。
ピッ、ピッ。
手に小さな水滴が飛んでくる。
噴水の中で亀の姿になったエコーが、鼻から水鉄砲を飛ばして遊んでいた。
無表情なのに、なんだかとても楽しそうだ。
「エコー、そろそろおやつに……あっ」
カイエがポケットからビスケットを取り出して見せると、エコーはパクッと咥えて水に沈んだ。
「あーあ」
……水中で、ビスケットが溶けていく。
水の中に広がるビスケットを、口を開けて見つめるエコー。
どうやら、ウッカリだったらしい。
トントンと自分の横を叩くと、エコーがヨロヨロと水から上がってきた。
何となく悲しそうな背……じゃなく甲羅。
カイエは自分の分のビスケットを半分、エコーの前に置いてあげた。
おやつを齧りながら膝の上でノートを開き、書き残した内容を見返す。
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『
火のまほう
フェル → 火がでる
フェルティア → 火がとぶ
メモ
はっか、しゃしゅつ
』
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グレンの魔法を見せてもらった時の記録。
「火がとぶ……」
(火がとぶって、どこからとぶんだろう?)
ノートを閉じたカイエはビスケットを急いで飲み込み、噴水から少し離れた。
父の仕草を真似て、人差し指と中指を揃え水面にに向ける。
「……フェルティア」
ぽんっ。
指先に現れた小さな火の玉が、勢いよく水に当たる。
ジュッ。
火は音を立てて、跡形もなく消えた。
「……え? あれっ?」
カイエは噴水へ駆け寄り、身を乗り出す。
水面を見るが何もない。
煙も、灰も、焦げた跡もない。
次は至近距離で指を構える。
「フェルティア」
ぽんっ、ジュッ!
「フェルティア」
ぽんっ、ジュッ!
「フェルティア」
ぽんっ、ジュッ!
何度も試すが、水面には何も残らない。
「火、どこいった?」
ゆっくりとビスケットを味わうエコーの隣にノートを広げ、カイエは急いで書き記す。
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『
フェルティア
火がとぶ
水にあたるときえる
火はどこへいった?
→ あとでしらべること!!
』
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「うーん。 もえてるのに、もえてるものがない?」
一体どうやったら、これを確かめられるのだろう。
エコーは少しだけ興味深そうな目でカイエを見ていたが、頭を傾げて考え込むカイエは気づいていなかった。
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