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倉庫脱出編 / 第2話
——ほんの数時間前の出来事である。
八代隊長率いる防府基地所属、陸上自衛隊第31特務小隊は、地球外生命体と目される謎の軍勢に襲撃され、戦場と化した市街地を郊外方面へ撤退を続けていた。
先頭を全高6mの巨大な人型兵器、正式名称を「九六式機動外骨格 二足歩行式戦闘車両」、略称「96式ME」2機が1台の大型トレーラー「指揮車両」と小型の偵察用機動車両「偵察車両」を警護するように疾走っている。
指揮車両の中には、基地を脱出するときに保護した民間人数名も同乗している。
後方では、同型ながら重装甲の大きな盾を構える96式ME1機が、殿として防御を務め、追従していた。
彼らが国道沿いの住宅街を山口市方面へ向けて撤退しているときに、それは起こった。
住宅街から飛び出してきた小さな男の子が、泣き叫びながら懸命に彼らの後を追いかけてくる。
その姿を後方の3番機パイロット、笹木啓介が捉えた。
「03より全隊、後方約200に小学生くらいの男の子を発見。一旦停車されたし」
笹木の3番機は立ち止まり、機体を翻して後方へ向かって駆けだした。
男の子は泣きながら必死に追いかけているが、その小さな身体では距離はなかなか縮まらない。
『全隊停車!防御態勢!仙川!反転して救助!笹木は後退して救助支援!』
1番機パイロット、八代隊長の号令が飛ぶ。
『05より各機、方位010よりアンノウン、急速に近づく!警戒を!』
指揮車両、レーダーを担当する葉月から怒号のような無線が入る。
「ああ、やばい・・・」
笹木は左後方の上空からまっすぐ急進してくる蜻蛉のような飛翔体を確認した。
進行方向には男の子がいる。
狙われているのは明らかだった。
笹木は機体を急停止させ、再び反転して接近する敵を正面に捉えた。
右腕にマウントした50ミリライフルの銃口が火を放ち、空気を切り裂く金属音とともに光の直線を描くと、飛翔体の赤く光る巨大な目に命中した。
しかし、弾丸は白い結晶状の何かに弾かれ、跳弾した。
蜻蛉のような飛行物体は、攻撃を全く意に介せず急速に距離を縮めてくる。
1番機:八代、2番機:楓の両機も連携して発砲するが、命中しても跳弾してまるで効果がない。
仙川の偵察車両が笹木の横を駆け抜け、急ブレーキのスキール音をあげて男の子をかばうように急停車したが、蜻蛉型の飛翔体はなおも急速に高度を下げながらまっすぐ男児へ向かってくる。
3機は猶もライフルを発砲し続けたが飛翔体は怯むこと無く突進する。
笹木は意を決して、シールドを前面に構え飛翔体の前に立ちふさがった。
『おい!やめろ!』
八代が絶叫する。
蜻蛉型の飛翔体はそのまま笹木の3号機と接触した。
構えたシールドは衝撃で左腕ごと吹き飛んでいく。
3番機は蜻蛉の鋭利な6本の脚で胸部を掴まれ、そのまま中空へと持ち上げられる。
蜻蛉はそのまま3番機を放り投げると、くるりと前転運動しながら長い尾を鞭のようにしならせ、3番機の鋼鉄の巨体を地上へ向けて叩きつけた。
3番機は仙川の偵察車両の頭上を超え、一瞬にしてアスファルトの地面まで叩き飛ばされた。
無数に重なる衝撃音。
地上にぶつかった反動で無軌道に跳ねながら破片をまき散らし、やがて慣性を失って停止した。
上空では雷鳴が轟き、ぱらぱらと雨が降り始めた。
蜻蛉型の飛翔体は、嘲笑うかのように中空でクルクルと回転すると、高度を上げながら市街地の方へ飛び去っていった。
突如始まった襲撃はぴたりと止み、辺りは雷鳴と激しさを増した雨音だけが響き渡っている。
周囲に敵影のないことを確認した彼らは、小さな少年を保護し、動かなくなった3番機を回収した。
コクピットブロックを強制開放し、中から動かなくなった仲間を救い出した。
それが、3番機パイロット、笹木啓介の最期だった。
助け出された少年の慟哭は、激しさを増す雨音でかき消されていった——
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