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物流倉庫編 / 第12話
——メディカルウェア姿の女性、九堂 紗綾(くどう さあや)は、個室になっている休憩室の、備え付けのソファに深々と沈み込んでいた。
ソファの前の小さなローテーブルには、アロマキャンドルがゆらめいている。
彼女の眼差しの先には、ベッドの中で丸くなって寝息を立てているアキラがいた。
コンコン、と休憩室の扉をノックする音が聞こえて、引き戸の扉がすーっと開いた。
少しだけ心配そうな眼差しの女将さんが顔を覗かせ、小さく会釈して静かに部屋に入ってきた。
「あきらくん、寝た?」
女将さんは小声で紗綾に尋ね、背を向けてそっとベッドの方を覗き込んだ。
シニョンにまとめ、束ねた後ろ髪は、少し解けかかっていた。
「はい、さっき」
紗綾は少しだけソファに埋もれていた身体を起こした。
「お疲れじゃろ、あんたも少し横になりんさいよ?」
「ええ、私はここで休みますので・・・」
「ほいじゃあ、隣の部屋におるけぇ、何かあったらおいでぇね」
女将さんは紗綾の肩にやさしく触れた後、静かに部屋を出て行った。
紗綾は、再び身体をソファに深々と埋めた。
正直なところ、まだ正式な看護師でもない私には今日起きた出来事は何もかも荷が重すぎた。
看護学校からお給料が良くてキャリアも望めるからと、インターン先に自衛隊の医療班を勧められたのがきっかけだった。
インターンに入って数日、元気な男性自衛官たちにイジられながらも特に何もない平穏な日々が続いていたけれど・・・今日はそれが一気に崩れた。
医務室に運び込まれる、傷だらけ、泥と血だらけの重症者。
医務室に入りきれず、廊下の壁に横たわるたくさんの負傷者。
清潔だった廊下は、泥と血で汚れきっていた。
汚れた壁に背を預け、佇む負傷者の列の中には、私をからかって笑わせてくれたあの元気な自衛官たちもいた。
順番にトリアージして指示を出す医官さん、指示に従い応急処置を続ける医官さんと看護自衛官さんたち。
私はただ、指示に従って簡単な処置しかできなかった。
それが精一杯。夢中で処置しつづけた。
医官さんが、肩を叩いた。
(あなたは民間人なんだから、あの人に従って、避難しなさい)
(ここはいいから、早く行って)
その人に手をひかれて、大きな車に乗せられて。
(シートベルトをしめたら、姿勢を低く保って)
(こわかったら、目を瞑って耳を塞いでいて)
(もうだいじょうぶ。俺たち国民の味方、自衛隊だから!)
激しく揺れる車の中で、その人は笑顔で優しく接してくれた。
笹木さんっていったっけ。
優しそうな人だったな。
哀しくて、心が張り裂けそうなのに、涙が出ない・・・
(もうだいじょうぶ。俺たち国民の味方、自衛隊だから!)
(ちょっと行ってきます!、あぶないからじっとしててね!)
その人の笑顔を思い出しながら、紗綾はゆっくりと瞼を瞑った。
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