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物流倉庫編 / 第11話
「ふぅ~、ごちそうさまでした」
隊長の八代 創(やしろ はじめ)は満足気にひと息ついて、手を合わせた。
「おそまつさま~」
と、コーヒーカップ、ソーサーを八代の傍らに整え、女将さんがコーヒーを注いだ。
「いつもすみません。ありがとうございます」
八代は空になった土鍋のお盆を下げてくれた女将さんを見上げ、会釈した。
「こちらこそ、隊長さんもお疲れ様です」
女将さんも会釈を返しお盆を片づけた。
「女将さんもお疲れでしょう?上で休んでください。」
八代が背を向けてカウンターへ向かう女将さんを労った。
「はい、お片付けが済みましたら、休ませていただきます」
女将さんは肩越しに軽く会釈で返し、厨房の方へ入っていった。
アロマキャンドルがゆらめいている食堂のテーブルには、八代、徳川、カイの3人が膝を突き合わせている。
アキラと紗綾、上田の3名は先に2階に上がってもらい、各々個室で休んでもらった。
楓は八代と交代して96式ME・2番機で哨戒待機、葉月は皆を運んできた大型輸送車(キャリア)、仙川は偵察用装甲車(ビークル)でそれぞれ交代で休息・哨戒に就いている。
八代は、食事をとりながら徳川と、この物流倉庫の関係者であるカイの3人で、『物資補給』について聞き取りと打ち合わせをしていた。
食事中に訊いた徳川とカイの話をまとめるために、八代は迷彩色のカバーのついた手帳を広げて、ペンを走らせた。
・自衛隊へ卸している”在庫”は『弾薬庫』で厳重に保管されている
・『弾薬庫』は、専用の『カードキー』が必要
・『カードキー』は事務所ビル棟で支店長が厳重に管理していた
・『カードキー』を作動させるには、『電力の回復』が必要
・電力の回復には『非常用発電機』を稼働が必要
「下から順番に解決していく必要があるか」
八代は箇条書きの一部をペンでトントンと叩いた。
徳川が話を繋げる。
「佐倉くんが気を失っている間に、停電で発電機が稼働して、燃料がきれたと考えて良いと思う」
「だがこういった田舎・・・といっては失礼だが、たいてい発電機用の重油を入れた予備タンクが近くに設置されていることが多い」
八代はコーヒーをひと口啜り、
「どうだろう佐倉くん、見覚えはないかい?」
とカイを見た。
「メモ帳、貸してもらっていいですか?」
カイは八代と手帳とペンを受け取ると、ざっくりとした見取り図を書きはじめた。
南北に走る国道。
国道に沿って建つ事務所棟と外来用駐車場。
事務所棟の西側に大きな物流倉庫と倉庫に隣接した食堂(現在位置)。
その北側に『弾薬庫』。
『弾薬庫』の東側壁にフェンスで囲まれた「発電機?」と「タンク?」
『弾薬庫』と物流倉庫が並ぶ西側に「冷凍倉庫」と「冷蔵倉庫」が南北に並んでいる。
『弾薬庫』から北の敷地外に、スーパーマーケットがあり、そのすぐ裏を国道2号線が東西に走っている。
手帳のノートの片面をいっぱいに使って見取り図を描き、八代に返した。
八代は手帳を受け取って見返し、現在位置、事務所棟、弾薬庫、発電機の位置をチェックし、弾薬庫と発電機を大きく囲うようにマルを書き加えた。
「ここは後で確認しておこう」
「最悪、キャリアから燃料を抜くことも考えておくべきか」
八代は見取り図の物流倉庫の南側の空間に、長方形を描き加えた。
「第一に電力の回復。これは併設のタンク次第だな。第二にカードキーの捜索と確保。支店長の姿がない以上、これが現状一番難しいか」
八代はメモの『カードキー』にアンダーラインを走らせる。
「一般論だが・・・重要な鍵なら、必ず予備があるはず。支店長の机の中、キーボックス、金庫の中とか」
徳川がカイの見取り図の『事務所棟』を指差した。
「ここは私が調べてみよう。何度か訪問した事があるし」
「では、私は発電機とタンクを担当します」
八代は見取り図をペン先でトントンと叩いた。
「僕は・・・」
カイが口を開いたが、徳川がそれを制して口元を緩ませた。
「君は一旦休みなさい。万事うまくいった後、頑張ってもらう必要がある」
「フォークリフトに、バイペダルローダー、荷物の積み込みには必要な人材だな」
八代も同意見のようだ。
「うまくいったら、96MEのコクピット、見せてやんよ(笑)」
八代が笑いながら右手を差し出した。
「岡崎から聞いてる。よろしくな」
「よろしくおねがいします!」
二人はがっちりと握手を交わした。
「懸念事項がひとつ」
八代は手元にあったコーヒーカップを、広げた手帳の見取り図の下に置き直した。
「距離があるので大丈夫とは思うが・・・この位置にヤツがいる。念の為、気付かれないように一連の作業を進める必要がある」
そう言って、コーヒーを一気に飲み干した。
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