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物流倉庫編 / 第18話
先行していた仙川の偵察車両は急転回しながら横道に入り、車1台がやっと通れるような狭い畦道に滑り込んだ。
畦道は、水田の真ん中で倉庫方面まで続いている。
仙川からの応答は無いが、狭すぎる畦道にビビりながら涙目で運転しているに違いない。
遅れて、八代の1番機が続く。
脚の遅い2足歩行型ではそのままでは追いつかれてしまう。
スモークで攪乱して、なんとか足止めに成功した。
畦道の先には、倉庫を背にライフルを構える楓の2番機が待っている。
舗装もされていない狭い畦道では1番機の重量は支えきれない。
大きな足跡が畦を踏み潰し、水田用の水路を壊して水飛沫を上げていく。
脚を取られそうになりながら、八代の1番機はどうにかバランスを取って駆け続ける。
(この田んぼの農家さん、大事な田んぼ潰して本当に申し訳ない・・・)
八代は思い出していた。
八代の祖父は農家をやっていて、祖父が田んぼや畑をどれだけ大事にしていたか。
田んぼをダメにしたことで、どれだけ損害が出るか・・・そう考えると心が痛む。
スモークグレネードの白煙に包まれ、ラプトルは一瞬目標を見失ったかに見えた。が、すぐにその細長い体躯を翻し、水田のそばに建つ民家をなぎ倒しながら八代達を追いかける。
ラプトルは水田の状態など知る由もなく、まっすぐ田んぼの中に勢いよく飛び込んだが、途端に泥濘に足を取られて動きが鈍化していく・・・
それでも、もがきながら水田の中を前に進もうとしていた。
その様子を見た楓がすかさずラプトルをレーザーロックし、指揮車両の葉月に指示を出す。
「02より05、目標ロック完了。支援攻撃用意!」
一瞬の空白の後、葉月の返答が返る。
『05より02、準備OKィ!』
「撃てーッ」
楓の合図で、後方の倉庫敷地内に待機していた指揮車両から上空へ向けて多連装小型ミサイルが発射された。
ミサイルは短い上昇のあと、ゆるやかな放物線を描きながら目標へ向かい着弾したが、やはり白い結晶のような障壁に阻まれ、弾かれた。
弾かれたミサイル群は、目標の周囲で連鎖爆発した。
爆発の勢いで、水田が大きな水飛沫を上げ、沢山の稲穂が宙を舞い、舞い上がった土壌が目標に降り注いだ。
さらに楓の2番機が50ミリライフルを目標に向けて発射する。
弾丸はまっすぐラプトルの身体に命中するも、白い結晶に阻まれて跳弾した。
仙川は楓の待つ畦道の端まで辿り着くと、楓やカイたちを避けてラプトルと距離をとり停車した。
遅れて八代も辿り着き、1番機の巨体を翻し50ミリライフルをラプトルに向けた。
一方、ラプトルも思うように動けないでいる。
進もうとするたびに、両脚はさらに泥濘に沈み込む。
長い尾を何度も泥濘に叩きつけ、前へ進もうとするが完全に後脚は泥濘にはまり、じたばたともがき続けている。
前脚の肩の突起から反撃の棘を発射するが狙いが定まらず、中空や泥濘の中へと定まらぬ方向へ飛んでいく。
ついには前脚も完全に泥濘に沈み込み、長い体躯の半分が泥濘にはまり、全身がほぼ泥にまみれてしまった。
泥にまみれた身体から、バチバチと白い結晶が弾けている。
それでもなお、細長い体躯をくねらせもがき続ける。
八代は、泥だらけの鈍く赤く光る頭部に狙いを定めてライフルを発射した。
バチン!と音を立ててまとわりついていた泥がはじけ飛び、破片が飛び散った。
『あれ?・・・いま当たらんかった?』
楓が驚いて声を上げた。
「・・・当たったな」
撃った当人の八代も、驚いている。
ラプトルは尚も泥の中でもがいている。
バチバチと弾けていた白い結晶は、泥にまみれ、やがて見えなくなった。
「ウェポンズ・フリー!撃て撃て撃て!」
八代の号令が飛び、1番機、2番機がライフルを連続発射した。
泥だらけの目標に、次々と弾痕がついて泥と破片が飛び散っていく。
少し遅れて、葉月の乗る指揮車から発射されたミサイルが着弾し、爆発と共に大きく破片が飛び散った。
爆散した破片や撒き上げられた泥が、ぼたぼたと音を立てて水田の中へ落ちて行った。
「撃ち方、やめ!」
八代は号令を出して、目標を観察した。
広い青々とした水田の中に、爆発でぽっかりと大きくえぐれた穴が出来た。
まだ黒煙が燻るその中心では、原型を失った残骸が泥濘の中に散らばっていた。
『当たったな、なんで?泥のせい?』
楓は目の前の結果を信じられないでいるようだ。
「もともと泥ハメして動けなくするだけだったんだろ?」
『せや、あのサクラってコがこの時期の田んぼなら足止めできるってゆーてきてん』
「なるほどな・・・」
八代は意外な結果に考えを巡らせていた。
これまで、あの未確認物体はどんな攻撃も効果がなかった。
現に先ほど道路で射撃したときも、白い結晶に弾かれて傷ひとつ付けられなかった。
それが水田にハメた途端、攻撃が当たるようになった。
「やっぱ、泥か?」
『雨降ったら止まるし、泥かぶったら弾当たるねんて、なんなんやろな、隊長』
楓も半ば呆れるようにぼやいた。
「まあいい。状況終了。引き続き警戒を厳とし、一旦倉庫前まで撤退するぞ」
残骸を回収して調査すべきだろうが、まずは民間人の安全確保が先だ。
八代は視線の先の残骸を静かに見つめていた。
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