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物流倉庫編 / 第19話
八代たちは爆散した目標の残骸を赤外線スキャンで熱量が失っていること、完全に活動を停止していることを確認すると、全員撤収して『弾薬庫』まで戻ってきた。
辺りは静まり返り、稼働する発電機の稼働音以外は何も聞こえない。
曇天の空に風の音が時折聞こえるだけだった。
念のため待機させた楓と葉月を除き、八代、仙川、カイは『弾薬庫』の前で徳川たちと合流した。
「隊長さん、ご無事でしたか」
徳川が安堵の面持ちで出迎えた。
隣の上田も少しほっとした表情で佇んでいる。
「ええなんとか。偶然が重なってアレの排除に成功しました。佐倉君のお陰です」
八代の険しかった表情は緩み、カイの方を見た。
「去年の今頃、会社の大型トラックが田んぼに突っ込む事故があったんです。車体が半分くらい沈み込んで、引き上げるのにすごく時間がかかったのを思い出して」
「なるほど、それでか。お陰で助かった。ありがとう」
八代はカイの肩をぽんぽんと叩いた。
「いえいえ!僕もこんなに近くで96MEの戦闘行動が見れたし!」
「それに、何かやってた方が気が紛れるんです」
カイも緊張がほぐれ落ち着きを取り戻した顔で笑った。
「まったく(笑) 危ないから二度としないでくれよ」
八代は苦笑した。
「では隊長さん、お疲れのところ申し訳ないですが少しお話があります。こちらに来て頂けますか」
「了解しました。仙川、佐倉君たちと一緒に『弾薬庫』の備品の確認を頼む」
「了解です」
仙川は短く返答し、上田、カイを促して『弾薬庫』の中へ向かった。
八代、徳川も『弾薬庫』の奥へと向かっていった。
「お兄さん!無事じゃったかね!」
『弾薬庫』の中に入るなり、女将さんが心配そうな顔でカイたちを出迎えた。
「おらんくなったけぇ、心配しちょったんよ?怪我しちょらんよね?」
女将さんはカイの無事を確かめるように全身をくまなく見定めた。
「あ、ご心配お掛けしました。大丈夫っす」
一緒にいたサヤとアキラも女将さんの後ろで少し安心した表情をしていた。
「——それで、お話というのは」
「実は、近日中に防府基地に納入予定だった試作機がここに保管されていまして」
「試作機?」
「ええ、次世代AIを搭載した新型コアフレームシステムで、部隊の中心に組み込むことで戦況分析、戦術支援、行動支援など、部隊全体の作戦行動を高度にレベルアップできるシステムという話でして・・・」
「ほう」
「AIのラーニングと実効性試験を兼ねて現場配備するという計画でした」
「それがここに?」
「ええ、それがこのコンテナです」
倉庫の最奥まで来ると、保護カバーに覆われ「CLASSIFIED」の赤いラベルの貼られた大きなコンテナを指した。
「統合型共鳴対話システム、通称I.R.I.Sを搭載した戦術支援コアフレームユニットの試作機、ということらしいです」
「それで・・・これをどうするのです?」
八代はコンテナのラベルをまじまじと見つめた。
「一応国家機密の類の代物でして・・・会社の命令があり、丸菱管轄の拠点か本来の納品先へ届ける必要があります」
「本来の納品先とは?」
「即応機動連隊の西部方面隊と聞いていますが、なぜ防府基地に搬入予定になっていたのかまでは存じません」
「西部方面隊といえば、熊本か・・・それで、これは即時運用可能なのですか?」
「96式のコアフレームとして使えるはずです」
「AIの方は初期状態の可能性があるので、スタンドアロンでどこまで運用できるかは判りませんが」
「ふむ・・・」
八代は今後の行動について考えていた。
ここで安全が確保できれば暫く駐留し、本部なり他方面隊との通信回復を待って指示を仰ぐのがベストな選択ではあるが、戦闘行為が行われた此処を拠点とするのはリスクが大きい。
仮にまた戦闘になれば、防御に乏しく逃げ場もない。
結論としては、速やかに別の安全な場所へ移動すべきと判断する他ない。
八代は指揮車の葉月に無線連絡する。
「01より05、近隣の基地、本部との連絡はどうか」
『こちら05、感なし。岩国、山口、小月、下関へ通信を試みるも応答なし。』
「衛星通信はどうか」
『リンクダウンが続いてるワ』
「了解。反応あれば報告ヨロ。通信終わり」
「八方塞がりか・・・」
八代は声に出すつもりはなかったが、思わず吐き出していた。
徳川も状況を察して残念そうな顔をして八代を見ている。
「徳川さん、丸菱グループでどこか安全確保できそうな処はありませんか?」
「そうですね・・・会社の緊急用プロトコルや緊急連絡網をチェックしていますが、確実な情報はありません。ただ、安全かは判りませんが、気になる情報が1つあります」
徳川は手元のスマートフォンを操作して、丸菱の緊急連絡網のログの中の1つを八代に見せた。
”VC先のY大知能情報科技研に一時避難します。研究棟地下シェルター有(山口支店/兼子)”
「これは・・・近いのですか?」
「ええ、Y大の知能情報科学技術研究所はここから20kmくらいです」
「近いな、偵察車両を先行させて調べるか・・・仙川!」
八代は備品をチェックしていた仙川を大声で呼んだ。
「はい!」
仙川と一緒にカイも付いてきた。
「後でY大学の知能情報技術研究所付近の偵察に行ってもらいたい、位置は徳川さんがご存知だ」
「了解です。徳川さん、ルートを教えて頂けますか」
仙川は徳川に寄り添うように手にしていたタブレット端末を操作し始めたが、カイが仙川に軽く手を挙げて声をかけた。
「あの・・・僕そこ判りますよ。うちの高専の隣だし」
仙川は驚いて顔を上げた。
「え、佐倉くんの学校なの?」
「はい、工学部の隣の高専に通ってます。ついでに寮もそこです」
「これは良かった、土地勘のある人がこんなに近くにいた」
徳川は思わず笑みがこぼれた。
「ところで、何しに行くんですか?」
きょとんとした表情でカイは尋ねた。
「ここよりも安全な場所を探して、君たち一般市民を避難させたい」
八代はそう答えたが、徳川がさらに付け加えた。
「実はもう一つ。あの試作機のAIシステムの研究開発を行っていたのは、この研究所なのです」
「あれも丸菱の息のかかった研究所へ届けられれば、私も後顧の憂いを絶てます」
「そういうことですか・・・一石二鳥、ということですね」
八代は苦笑いを浮かべた。
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