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物流倉庫編 / 第17話
「02より01、状況不明、なにが起きてん!?」
楓は無線で八代に問いかけながら、スモークグレネードの白煙に覆われ視界ゼロの状況を確かめようとした。
楓のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)に、八代と仙川が全力で南方向へ移動している光点が映し出された。
視界が遮られている以上、下手に動けない。
せめて目標の位置だけでも視認できればと、映像を赤外線モードに切り替えた。
長い尾を水平に伸ばし、細長い体躯を前傾させながら南方向へ八代たちを追いかける赤い影を確認した。
「02より全隊、目標01を赤外線でロック!」
『こちら01、目標を倉庫から引き離す!02,05はそのまま待機!04、右だ!その交差点を右に行け!くっそ、田んぼだらけで遮蔽物が何もねぇ!』
仙川の乗る偵察車両がドリフトで後輪を滑らせながら国道の交差点を右方向へ急旋回し、民家と田んぼしかない農道へ滑り込んだ。
遅れて、八代の1番機が鋼鉄の巨体を斜に翻し、交差点の信号機をなぎ倒しながら仙川の後を追いかけた。
楓の2番機が目標をロックしたことで、八代の1番機は視認しなくともレーダーマップ上に赤い光点として共有表示された。
目標は約100m後方から追従してきている。
——カイはバイペダルローダーの両腕で30ミリハンドガンを抱えたまま、『弾薬庫』の外に出た。
葉月が白煙にまぎれてトラックヤード前に停車中の指揮車の方へ走っていったのが見えた。
楓の2番機は白煙の向こう側の様子を光学センサーで探っているようだった。
カイは、『弾薬庫』の中にいる徳川に、
「徳川さーん、扉閉めといてくださーい」
と声をかけると、楓の2番機へ向かった。
「岡崎さーん!」
カイは2番機の傍に立ち、大声で声をかけたが、閉鎖されているコクピットには声は届いてないようだった。
楓の2番機は右腕に装備したライフルを構えると、敷地の南側・・・八代たちが向かった方向へ移動しようとしたが、すぐ横にいたカイにぶつかりそうになった。
『ちょっと!危ないから下がりー!』
2番機の拡声器から楓の声が響いた。
カイはバイペダルローダーから身を乗り出して、大声で叫んだ。
「アレが動き出したんですかー!?」
『そうや!隊長たちが囮になっとる!』
今度はカイの声が届いているようだ。
「囮?でも攻撃利かないんでしょ!?囮になってるなら僕にいい考えがあります!!」
『え?なんやて?』
「ついて来てくださーい!」
カイはハンドガンを地面に下ろして、『弾薬庫』の裏の方にある倉庫会社の裏手門から、スーパーマーケットに面した裏道を進み、敷地の外の南側に出た。
カイの作業用バイペダルローダーなら余裕だが、楓の2番機はほぼギリギリの道幅。
しかし楓はその狭い道路を難なくついてきた。
スモークグレネードの白煙から外れると、二人は水田を挟んで国道を南方向へ逃げる八代たちとそれを追いかけるラプトルの姿を見つけた。
目の前の水田は、青々とした稲穂が風に揺れている。
位置的には、水田を挟む形で八代たちの対角線上にいることになる。
水田は、東西南北に4分割するように未舗装の畦道が通っていた。
「岡崎さん、隊長さんに田んぼの間の畦道を抜けて、こっちに来るよう伝えてくださーい」
『どういうこと!?』
「アイツを田んぼに誘導してハメるんですよ!今の時期、田んぼにハマったらほぼ動けなくなるはずです!」
『はぁ?ガチでゆーてる!?いや・・・ありえるか!』
楓は”あること”を思い出してカイの作戦に乗った。
確かめるために、2番機で目の前の水田へ脚を踏み入れた。
あっという間に膝まで沈んでバランスを崩しそうになり、慌てて脚を引き抜いた。
——南へ疾走する八代に楓からの無線が入る。
『02より04、01!、そのまま迂回しながら畦道をウチの位置まで走って!』
「あぁ?何だって!?」
八代は困惑しながら叫んだ。
『隊長、泥濘作戦や!ええから田んぼ避けながらこっち来ぃ!落ちんなや!』
右方向を見ると、楓の2番機が倉庫の外にいるのが見えた。
隣でカイの乗るバイペダルローダーが手を振っている。
その前には、先ほどまでの雨でたっぷりと水を湛えた水田が広がっている。
穂肥の時期に入り、青々と背を伸ばした稲穂が草原の如く風に揺られている。
「そうか!田んぼか!(攻撃が)当たんねぇのにハメんのかよ」
八代はボヤきながらも、それ以外の選択肢が無いことは判っていた。
周辺は民家が数件あるだけで、あとは広大な水田と畑しかない。
全高6mはある96MEの身を隠せるほどの遮蔽物はない。
見通しが良すぎるのだ。
ただ逃げるだけではどうにもならない。
圧倒的に不利。
それなら、田んぼの泥濘にハメて動きを止めればワンチャン民間人だけでも退避できるかもしれない・・・
「04、05の指示通り迂回せよ!スモーク発射!」
八代は残りのスモークグレネードをその場で発射した。
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