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物流倉庫編 / 第4話
仙川は食堂に入った後、カウンター奥の厨房を検索していた。
赤色灯に照らされた厨房内は、調理器具は一部散乱していたが、元来整理整頓が徹底されていたのだろう、倒れ散らばった調味料類を除き、整然としていた。
厨房を一周した後、ヘルメットに固定していた暗視装置を下ろし、外に面した勝手口のドアノブに手をかけ、ゆっくりと回した。
雨は横殴りにいっそう激しくなっていた。
ここは位置的には建物の裏手にあたるようだ。
左手には別の倉庫の建物、その奥にはフェンスがあり、細い道路を挟んでスーパーマーケットらしき建物が見えた。
スーパーの向こうは、大きな国道に繋がるバイバスと、国道の法面が見えるだけだった。
暗視装置をサーモ画面に切り替え、さらに目視する。
バイバスの先の国道2号線上に、いくつか小さいが熱反応が確認できる。
人型ではない。妙に細長く、そして相対距離から察するに、かなり大きい。
仙川は静かに厨房に戻ると、音をたてないよう勝手口を閉めた。
「こちら04、送れ」
『01から04、通信良好、どうぞ』
「現在地、倉庫裏手より国道2号の状況確認」
『01から04、状況どうか』
「国道上にストレンジャー2体、北西方向、距離2キロ程度と認める。」
『地上体か、飛翔体か』
「飛翔体が着地し停止していると推測」
『01了解。国道は無理だな。引き続き報告を待つ。』
仙川は勝手口から一番近いシンクの蛇口をひねったところ、水は普通に出た。
予備の水筒のキャップを外し、キャップを器にして水を貯め匂いを確かめた後、少し口に含んでみた。
異常はないようだ。
水筒に水を貯め、腰のポーチに収納した。
「04より01、追加報告、食堂で水道水を確保。喫食可能。検索を継続する。終わり」
『おーそうか、良かった。終わり』
『05より01、食堂の安全を確保。しばらくは雨風しのげそうだぜ~、送れ』
仙川からの通信が終わった後、葉月からの通信が入った。
01・・・八代 創(やしろ はじめ)はバイザーに投影されている暗視モードの視界を注意深く確認した。
「01より05、ご苦労さん、少し休め。民間人の皆さんの様子はどうか」
薄暗いコクピット内は、コンソールパネルのLEDがわずかに緑色に発色しているだけで、ヘルメットに固定されたバイザーに、機体の状況、周囲の状況がステータス表示されていた。
八代の視界の先には、500メートルほど先で行動停止している、異形の敵性勢力の姿があった。異形の塊は熱を帯びて水蒸気のようなもやが出ているが、まったく動く気配がなかった。
『05より01、可能であれば皆さんを暫く休ませたい。保護した少年もショック状態の様子。敵さん寝てるんなら俺らも交代で休んだ方がよくね?』
「05、通信は簡潔にな。敵勢力に動きなし。電池切れたみたいに動かねぇ。」
『05了解。マジ充電中だったりして(笑) じゃぁ皆さんに休息をとってもらいますわ。終わりィ』
八代は(はぁ・・・)と溜息を付いた後、通信のスイッチを入れなおした。
「01より02、お前も休息をとれ。2時間交代だ。送れ」
『02了解。キャリアに繋いで給電しとく、終わり』
八代は通信を切り、鼻から大きく息を吐いて、ぼんやりと外を眺めた。
相変わらず雨は降り続けている。
水筒を取り出し、水を一口含む。
「腹減ったなぁ・・・ラーメン食いてぇ」
「女将さん、厨房、使えそうです。さすがに勝手がわからないので見てもらえませんか」
厨房から仙川が戻ってきて、割烹着姿の女性・・・久保田乙女(くぼた おとめ)に声をかけた。
「ほーじゃねぇ、何か使えそうな食材でもあればええね」
二人はカウンターの横から厨房に入ると、久保田は真っ先に業務用の大きな冷蔵庫を少しだけ開けた。
仙川は開けた中の状態をライトで照らす。
「停電からずっと閉まったまんまじゃね、まだ冷やい」
冷蔵庫の中は食材が入ったタッパーや、ラップでまかれた調理用バットが整然と並んでいた。
冷蔵庫の扉をひとつずつ、丁寧に開けて調べた後、今度はガスコンロ、フライヤーなどの状態をチェックし、シンク、食器棚、調理用テーブル、カウンター裏の調味料、保温ジャーの中身までひととおり見てまわった。
「使えそうじゃね、保温ジャーのごはんは気を付けんといけんけど・・・何かこさえようかね。でも少し明かりが欲しいわねぇ」
「わかりました、女将さん、とりあえずこれを」
仙川は手にしていたL字ライトを久保田に手渡すと食堂の方へ移動し、声を上げた。
「みなさん、後でお返しするのでスマホのライトをONにしてお貸し願えませんか?」
「葉月くん、空のペットボトルを集めて、ラベルをはがしてくれる?」
「あいよ~了解」
葉月は自動販売機横のゴミ箱からペットボトルをいくつか取り出し、ラベルをはがして近くにあった手洗い用の洗面台で洗うと、水で満たして蓋を閉めた。
「では、すみませんが一旦テーブルの上にスマホを置いて下さい」
仙川は自分のスマホを取り出してテーブルの上に置いた。
続いて皆がそれぞれにテーブルに集まり、ライトをつけたスマホを置いていく。
スマホが置かれていくたびに、テーブルの上がライトで明るくなっていった。
「バッテリー、もうあんまり無いんだけど」
Tシャツにジーンズ姿の青年、上田がスマホをテーブルの上に置きながら少し迷惑そうに呟いた。
仙川は軽く微笑んで
「大丈夫、あとでキャリアで充電できますから。ご協力感謝します」
と笑顔で応えた。
葉月が水で満たされたペットボトルを両手で抱えて戻ってくると、仙川はそのうちの1本を受け取り、スマホの上に置いた。
途端に、ペットボトルが周囲を明るく照らした。
「こうするとランタン代わりになるんです」
「へぇ~」
上田が感心したように声をあげた。
ずっと俯いたままだった少年は顔を上げ、まだ不安が残る眼差しで光を見つめていた。
「では、皆さんすこしお借りします。ご協力ありがとうございます」
仙川は一礼すると、急ごしらえのスマホランタンをもうひとつのテーブル、カウンター、厨房の中へ配置していった。
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