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物流倉庫編 / 第15話
朝食を終えた後、八代と徳川から重要な話があると切り出され、待機中の楓と仙川を除く8人が食堂に留まっていた。
「まず、良い話を私、徳川からさせていただきます。先ほど、事務所の中を調べたところ、非常電源設備の鍵を見つけました」
「ここに戻る前に設備を確認してきましたが、目立った破損や故障などもなく、燃料さえ供給すれば稼働できそうでした。電気が回復すれば、ひとまずは電気設備やテレビやラジオ、衛星ネットも使える可能性があります」
「幸い、水道は使えますし、食料品や生活用品なども倉庫に保管されているものを活用すれば、救助、救援が来るまでのライフラインは確保できそうです」
「ただし、電気に関しては非常電源ですので、燃料がある限りとなります。必要最小限に留める必要がありますし、我々は今も大変危険な状況であることには変わりありません」
徳川は八代へ目配せすると、八代は軽く手を挙げて、交代して話し始めた。
「改めて、私は陸上自衛隊防府基地の八代と申します。現在の状況について、我々が把握している情報について申し上げます」
「・・・昨日7月○日14時頃、国家安全緊急避難命令が発令されました。端的に申しますと、多数の未確認物体が出現し、無差別に攻撃を受けたことによります。」
「これは、国内外問わず、世界各地で同時多発的に発生したと聞いています。未確認物体の詳細など一切が不明で、我々の知る限り世界中のあらゆる兵器に該当するものは無いと思われます」
「現在判っていることは、我々を無差別に攻撃し、一般市民を拉致、誘拐している模様です。これに対し、我々の防衛力ではまったく対応できていません」
上田が質問した。
「つまり、まったく歯が立たない、ということですか?」
「残念ながら、仰る通りです」
「司令部からの命令は、一般市民を可能な限り保護・救護し、戦闘地域から離脱、状況終了まで安全を確保せよ、でした。」
「しかし、戦闘地域となった防府市内を脱出してからも、危険な状態は続きました。誠に遺憾ですが、我々もここに到着するまでに隊員1名を失いました。」
アキラがびくっと身体をこわばらせた。
隣にいた紗綾がアキラの背中にそっと手を添えた。
上田がさらに質問した。
「他の自衛隊とか、警察、消防なんかとも連絡はとれていないんですか?」
「これまで防府基地含め他の方面隊・支局などと何度も通信を試みていますが、応答はありません。加えて、指揮車両、偵察車両のAIであらゆる無線、通信の傍受を行っていますが、ノイズが多く受信できていないのが現状です」
「まずは電力を最小限に維持しつつ、ここでの安全を確保するために、この会社の裏手にある、防衛省納品庫に移動したいと思います。この倉庫は防爆仕様で外壁も厚く、シェルター代わりになります」
「そこで、皆さんにお願いがあります。倉庫から必要な水・食料などの生活必需品などを集め、防衛省納品庫に移すお手伝いをお願いしたいのです・・・」
——それから、グループに別れて作業が開始された。
徳川、八代、カイは防衛省納品庫。
女将さん、上田、紗綾、アキラは食堂で食料品や生活用品の整理。
葉月、楓、仙川は周辺の警戒にあたった。
徳川、八代、カイの3人は食堂から出ると、『弾薬庫』と呼んでいた防衛省納品庫へ向かい、その建物に隣接しフェンスで囲まれていた非常発電施設にやって来た。
いつの間にか、雨は止んで雲間から青空が見え始めていた。
ここで、カイの機械いじり好きが存分に発揮されることとなった。
彼は発電施設の鍵を開けてフェンスの中に入ると、発電設備を隅々までチェックし、予備タンクのバルブを解放してあっという間に発電機を再稼働させた。
発電機が稼働し始めたことで、電気が戻った。
厨房と食堂の明かりが戻り、巨大な冷蔵庫のインバーターが唸りを上げ始めた。
厨房で食料品を整理していた女将さん、上田、紗綾、アキラの4人は、ぱっと明るくなった厨房で喜びの声を上げた。
「冷蔵庫が動くんなら、出したもんをまた入れなおさんといけんねぇ」
女将さんは、苦笑いしながら嬉しそうに声を上げた。
発電機が稼働したのを確認すると、徳川と八代は『弾薬庫』の正面ゲートに回った。
ゲート横のパネルを開けて、カードリーダーにICカードをかざすと、液晶パネルに『パスコードを入力してください』と表示された。
徳川は、ICカードを裏返すと、そこに書かれていた12桁のパスコード打ち込んだ。
「カードに直接書いとくなんて、田舎あるある過ぎでしょうに」
八代は苦笑いした。
「おかげで、助かりましたけどね」
徳川は、エンターキーを押した。
目測で縦横6メートルくらいの大きな両開きのスライド扉がゆっくりと開き始めた。
扉の開閉音を聞きつけ、カイは発電施設から飛び出すと、二人のすぐ後ろで扉が開く様子に目を輝かせていた。
密閉型の建物の内部の照明が点灯すると、大小さまざまなコンテナが整然と立ち並んでいた。
「これでしばらくは持ちそうですかね」
徳川は中に入って、コンテナを眺めた。
「ええ、ただこれまでどの火器も効果が無かったので、安心はできませんが」
八代も倉庫内に入ると、手近なコンテナのラベルを確認し始めた。
八代につられてカイも同じコンテナのラベルを覗き込んでいた。
徳川はまっすぐ倉庫の奥へ進んでゆき、突き当りの広い空間まで歩を進めると、保護カバーに覆われ「CLASSIFIED」の赤いラベルの貼られた大きなコンテナを発見した。
(これですね)
徳川は踵を返し、八代のもとへ戻った。
「八代さん、大事なお話があります」
——偵察車両の中で通信電波の傍受を続けていた仙川は、異常に大きな電波の揺らぎ、ノイズを検知した。
「AI、今のノイズを解析して」
『解析中・・・デコード不可の通信プロトコルです。発信源は南南東方向、距離1000m以内』
(・・・近いね)
仙川は無線で楓に情報を送る。
「04より02、ノースアップで5時方向。距離1000以内。異常な電波を検知。確認されたし」
『02了解、確認する』
——楓は仙川の通信を受け、片膝をつき待機姿勢をとっていた96ME2番機を起こし立ち上がらせると、指定方向に視線を向けた。
その先は、これまで微動だにしなかった、あの黒い巨大な影があった。
全体を覆っていた水蒸気は消え、赤い外皮が鈍く光る頭部を上げて、辺りの様子を伺っているようにも見える。
海老のように重なり合う甲殻を持つ胴体の先では、昆虫の節のように連なる細長い尾をうねるように動かし続けている。
2番機は建物に身を隠すように屈め、巨大な影を視界に捉え続けた。
黒い巨大な影は、その細長い胴体を起こすと、SF映画で観た恐竜のように、所在なくぐるぐると徘徊しはじめた。
まるで何かを探すように、円を描くように、ぐるぐると。
「02より全隊へ。警戒態勢。敵勢力が行動開始。繰り返す、敵勢力行動開始」
間髪入れず、八代から返信が入った。
『01より02および全隊へ。そのまま各持ち場で警戒続行。すぐ戻る。終わり』
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